【M】心理クリニック
投稿者:ねこじろう (149)
「まあ確かにあんたに似てるといえば似てるかな。でも他人の空似というやつじゃないの?」
末崎は医師からスマホを返してもらうと、不満げな表情で口を開く。
「俺ね、このスナップショットを撮った後、この右端の男に殺されそうになったんです」
「え?」
「この写真を撮った後に俺、トイレに行ったんですよ。
そして用を足して洗面所で手を洗った後ふと姿見を見ると、背後に男が立っているんです。
それがその画像の端に映っていた男で驚いて振り向こうとすると、いきなり後ろから俺の首を締め出したんです。
必死に抵抗して何とか免れたんだけど、危うく意識を失うところでした。
そいつが逃げ去るところを目で追ったんですけど、間違いなく画像の男でした」
「つまり、あんたは自分によく似た男に殺されかけたということなの?」
末崎は医師の問いに暗い顔で頷く。
医師は一通り末崎の話を聞くと、話し始めた。
「それじゃあ、さっきからのあんたの話をまとめてみようか。
まず1ヶ月前くらいからあんたは奇妙な悪夢にうなされるようになった。
夢の内容というのは、
薄暗く鬱蒼とした森の中を歩いていると、あんたと同じ顔の男が何故だかあんたを追いかけ回してくる。
そしてそのような悪夢を見るようになってきた頃からあんたは日常においても、たまに自分そっくりな人を見かけるようになる。
そして三日前にはとうとう襲われてしまった。
とまあ、こんなところかな?」
M医師の説明に末崎はこくりと頷くと、また喋り始めた。
「実は一月前に実家の母が亡くなりました。
そう、ちょうどその後くらいから俺はあの悪夢を見始めたんです。
母は亡くなる直前、病室に見舞いに訪れた俺にこんなことを告白しました。
あなたには本当は兄がいるはずだった。
かつて私は双子をお腹に宿していたのだけど、結局生まれてこれたのはあなただけだった。
なぜならあなたの兄は、あなたの付けていたへその緒が首に絡まり出生前に命を落としたから。
出産後も度々あなたの兄は、深夜私の枕元に姿を現しては、あなたへの恨み辛みを吐露していた。
俺はあいつに殺されたんだ、本当は俺の方が生まれてくるはずだった。
私はその都度あの子にだけは手を出さないで欲しいと何度も何度も詫び、お願いだから成仏してちょうだいと手を合わせていたと」
「なるほど。
つまりお母さん亡き後お兄さんは、初めのうちは悪夢の中に、最近に至ってはとうとう現実の世界に現れてきて命さえ脅かそうとしていると言ってるわけだね」
気味が悪いですね、怖かったです((( ;゚Д゚)))