【short_29】アリ

ある日のこと。
いつものように缶コーヒーを飲みながら、デスクワークをしていると、
一匹のアリが机の上を歩いていました。
目障りなので、すぐにティッシュでつぶしてゴミ箱へ・・・。

ところが、また一匹、そしてまた一匹と・・・。
さすがに「アレ?おかしいな」と気付き、アリがどこから来るのか探ってみました。
すると灰色のカーペットのせいでよく見えなかったものの、床にアリが結構いるのが判りました。さらにアリの多い方へと探って行くと・・・原因が判りました。

社内にある自販機横に設置された『ビン・缶』専用ゴミ箱から、玄関ドアを通じて外にある植え込みまで、アリが隊列を成しているのです。どうやら植え込みにアリの巣があるらしく、社内のゴミ箱から飲み残しのジュースなどを集めていたようです。

総務課にお願いして、アリの除去、殺虫剤散布が行われ、社内ルールとしてジュース類の飲み残しは必ず流しへ捨て、水で缶を一度ゆすいでからゴミ箱へ捨てるという事になりました。

それからしばらくして、またアリが発生しました。
前回の件もあるので、すぐに自販機横のゴミ箱を調べましたが、なんともない。
外の植え込みを見ると、やはりまたアリの巣が出来ており、大量のアリが群れを成しています。・・・でもどうやら社内へ紛れ込んだのは一部の先遣隊で、本隊は別の所へ進んでいるようです。本隊の列を追ってみます。

「あっ!!・・・しまったぁ・・・」
アリは会社の裏手にあるプレハブ小屋へ続いています。我々が『離れ』と呼んで物置代わりに使っている所。そこの換気のための隙間から、アリが中に入り込んでいるのです。

(しまった、どうしよう・・・昨日の夜、ついカッとなって社長を撲殺して、仕方なく一時的にプレハブ小屋に隠したのに・・・まさかアリたちに発見されるとは・・・)

「そ、そうだ。ボクがやったという証拠はないはず。このまま知らんぷりしておこう」

ボクは、いつものように缶コーヒーを飲みながら、デスクワークを続けました。

「ふふふ。社長がいないと仕事がはかどる~~~」