ミミズ人間
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/26
09:34
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見たくないのに、目が離せない。
ここから立ち去りたい。
立ち去りたいのに、足が動かない。
今、気が付いた。
さっきまでは自然に振り向けていたのに、今はもう、身体を自由に動かせなかった。
――もぞり
やがて、「それ」の姿が、闇の奥から浮かび上がってきた。
それは、巨大なミミズだった。
1メートル以上ある。
人間サイズのジャンボ・ミミズ。
いや、足がある。
股間から、二つに別れた足が伸びている。
肩の部分から、細い――身体を支えるには細すぎる腕が生えている。
全身皮膚をきれいに剥がされたかのように、むき出しの筋肉が、ピンク色にテラテラと光っている。
ミミズ――人間。
そう、ミミズ人間だ。
むき身の神経にアスファルトがこすれて苦しいのか、身悶えしながら進んでくる。
カンカンカンカン――。
鳴り続ける踏切のこちら側へ。
やだ! 来ないで!
不意に、
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kanaです。綿貫さんはいいお話いっぱい書いてますよね。素晴らしいです。
綿貫です。kana様、ありがとうございます。恐縮です。