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不思議体験

ねこじろうさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

終着点のあるバス
長編 2023/12/21 14:23 7,535view
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そんなことを思いながらしばらく外を見ていて何気に前を見ると、前の二人席の隙間から何かが見えた。
何だろう?と意識をそこに動かす。

─え!?
彼はギョッとした。

それは人の顔だった。

隙間の向こうの暗闇に女の白い顔が浮かんでおり、不安げな目でじっと彼を見ている。

Aは慌てて目を瞑り、もう一度見直してみる。
だが、すでにそこにはもう何もなかった。

それとなく立ち上がってみる。

前の席には作業着姿の年配の男性が一人、窓際に座り外を見ている。

通路を挟み右側には農作業着姿の老婆が座っている。

さらに前の方を見る。

あちらこちらに座る人たちの、後頭部が見えるだけだ。

皆何をするわけでもなく、ただじっと座っている。

彼は再び腕を組み、窓の外に目をやった。
昼からの疲れからか、少しうとうとしだしていた。

……

それからどれくらい経ったころだろうか。

彼は何かぞくりとするものを感じて目を開けた。

─ああ、寝てしまったようだな。

自嘲気味に頭を掻きながら首を動かしたとき、えっ?と思った。

─隣に誰か座っている!

寝ている間に、乗ってきたんだろうか?

……くたびれたスーツ姿の六十過ぎくらいの男性が、Aから少し離れたところに座っていた。髪はボサボサであり、濁った目で、じっと一点を見つめている。

「あの……あなたも、海の方に向かっているのでしょうか?」

彼は思い切って声をかけた。
というのは、隣の男にはなんとなく同じような匂いを感じたからだ。

男はびっくりしたような様子でAの方を見ると微かに微笑み、口を開いた。

「ええ……別にどこでもいいんですけど。
もう、何もかも終わりにしたくて……」

3/5
コメント(5)
  • 怖いというよりも悲しいお話しでした(>_<)。

    2023/12/21/17:21
  • 降車ボタン押さなかったんですね。奇しくも似たような境遇の男たちが出会い重ね合う思い。ラストの一文が光っています。最期、ひとりじゃなかったことが唯一の救いであり慰めでしょうか。

    2023/12/22/09:23
  • 皆さん、コメントありがとうございます
    ─ねこじろう

    2023/12/23/20:05
  • さみしいね

    2023/12/25/22:05
  • コメントありがとうございます─ねこじろう

    2023/12/26/15:56

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