ザイコウセイ
投稿者:綿貫 一 (31)
そして。
彼が固まっている間に、女の子は、背後に突如開いた黒い穴に、まるで吸い込まれるようにして消えてしまった。
後にはもう、何も残っていなかった。
§
§
僕はね――。
ずっと色々と調べてきたんだよ。この神隠しについてね。
今だって、その原因や理屈はよくわからない。
この学校の6年生の教室や、6年生自身が、現象を引き起こす鍵になる、ということくらいかな。
でも、あの日。
教育実習の時に見た光景は、僕に天啓を与えてくれたんだよ。
噂されていた「学校の裏側」は、確かに存在するって。
そこは、かつて黒板のメッセージにあったように、「暗くて光の刺さない真夜中の学校の世界」なんだろうって。
これまで消えた児童は、ずっとそこで生き続けているじゃないか、ってさ。
だから。
きみには感謝してるよ、アカネちゃん。
僕はあの後、ちゃんと教師になって、この学校に赴任した。
目的は、なんとしても「こちら側」に来るためさ。
10年かけてようやく今日、「黒い穴」を見つけてそれが叶ったよ。
それにしたって、偶然だったけどね。
しかし。
想像通り真っ暗だね、ここは。
いつも肌身離さずライトを持ち歩いていてよかったよ。
ああ、きみたちにはまぶし過ぎるかな?
アカネちゃん。きみはあの時、図書室で会ったときのままだ。
セイイチくん。きみ、まだ鉛筆を握りしめているのかい? テストの時間はとっくに終わっているというのに。
他にも僕が知らないだけで、ずいぶん大勢いるんだね。
この裏側に引き込まれ、学校から抜け出すことのできない「在校生」諸君。
そして――
面白かった
なんか面白かったです。語り口が良かったです。