ザイコウセイ
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/19
19:33
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ああ、いた。
やっぱりいた。
ハルカちゃん。
僕はきみに会うために、ここまでやってきたんだよ。
今日までずっと、きみを探してた。
僕のこと、覚えてるかい?
――と言っても、この姿じゃわからないか。
いや、そもそも今のきみは目が見えないんだったね。
僕だよ。
セイジだよ。
1999年の7月のあの日、学校の屋上で、きみに告白してフラれた、青柳誠治だよ。
僕はずっと後悔していたんだ。
あの時、僕が屋上に閉じ込めたばっかりに、きみは神隠しに遭ってしまった。
黒板のメッセージを見て、きみがどこかで生きていることがわかって、なんとしても助けだそうと、僕は教師を目指したんだ。
だけど、アカネちゃんとの邂逅は、きみと再会できるかもしれないという希望――神隠しに遭った子供は、歳をとらずに生き続けるみたいだとわかったからね――と、ある欲望を僕の胸に灯らせた。
どんな欲望かって――?
この時の止まった暗闇の世界で、大人になった僕と、子供のきみと。
初恋の女の子と、いつまでも一緒に暮らせるんじゃないかっていうね。
なあに。
ここにいる連中はみんな、しょせん6年生のガキどもさ。大人である僕にかなう道理はない。
とっとと始末して、ふたりだけの明けない夜を楽しもうじゃないか!
……。
…………。
どうした、ハルカちゃん?
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なんか面白かったです。語り口が良かったです。