巡回バス
投稿者:nao (7)
その日は出張で地方へ。
無人駅で降り、駅前のロータリーでバスを待つ。
バス停の時刻表を見るとさすがに田舎バス50分間隔だ。
でも運よく?いや運よくでもないか、30分待ってようやくバスに乗れた。
車内には誰もいない。
都会では見ない不思議な光景に心が躍る。
席も取り放題、座り放題。
折角なので見晴らしのいい一番後ろの窓側の席に座った。
最後方の一段高い席から無人の車内を見渡すとなんだか気分がいい。
「私のためだけにバスを運転してくれる運転手さん、ありがとう」
窓から見える田園風景にしばし見とれているとすぐに睡魔が襲ってきた。
どのくらい寝てたのだろう。
気が付くと窓の外はもう真っ暗。
街灯もなければ人家の灯りもない。
車窓からはただただ不気味な漆黒の闇の世界が広がっているだけだった。
「しまった、寝過ごした」
「商談相手との待ち合わせ場所に早く行かないと」
急いで腕時計を見るとなんと夜中の1時だ。
「ダメだ、もう間に合わない。って言うか、1時?午前の1時?夜中?」
心臓はバクバク、気が動転して頭がパニックだ。
「落ち着け!落ち着け!確かに今、午前1時。商談はもう間に合わない。先方には明日朝一で土下座して…、さてこれからどうする?ん?待てよ、何でバスが走ってんだ?こんな夜中まで。深夜バス?いやいやこんな田舎に深夜バスなんて。いや、そんなことどうでもいい。降りなきゃ。そう、降りなきゃ」
ボタンを押すのも忘れ、
「運転手さん、降ります。降ります」と慌てて大声を出してた。「とりあえず降りてタクシーでも捕まえて宿に行こう」
促した。
「…」
怖いですねヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ