カートを押す老人
投稿者:nao (7)
短編
2023/12/03
21:50
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近所のスーパーで閉店間際によく見かける老人がいる。
オレンジ色のニット帽を目深に被り、白髭をたくわえ、青いワークシャツの袖を腕まくりして、くの字に曲がった腰で苦悩の表情を浮かべ、しんどそうにカートを押しながらすり足で歩いている。
すり足なので2メートル進んだら休み、また2メートル進むといった超スローペースだ。
横には息子さんだろうか中年の男性が補助をしてやっている。
どうやら自力では歩けないようだ。
その日僕は終電で帰ってきたのでスーパーはすでに閉まっていた。
仕方ないのでスーパーには寄らず家路を急いだ。
するとその途中、例の老人を見かけた。
「こんな夜中に?」
よく見るとすり足じゃない。ふつうに歩いている。しかもひとりだ。
カートも押してないし、いつも横にいる息子さんらしき中年の男性もいない。
腰も曲がってないし…、本当にあの老人か?…でも、でも…街灯の明かりでニット帽がオレンジ色であることが微かにわかる。
間違いない、いつものあの老人だ。
僕は老人に視線を送り続けた。
すると僕の視線に気づいた老人がこっちを向いてニヤリと笑った。
そして右手の人差し指で「シーっ…」とポーズをして見せた。
このお話は実話です。
あの日から何度か見かけてますが、以前と同様、カートを押し、息子さんらしき中年の男性の手を借りながらすり足でしんどそうに歩いています。
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((( ;゚Д゚)))
何かしらの企みがあるのでしょうか…
企み大有りですね。