死亡届

推しのライブチケットを受け取ろうとコンビニへ行くと、店員がチケットと一緒に１枚の用紙を差し出した。

「こちらにサインを」

「え？」

差し出された用紙には死亡届と書いてある。

「コンビニで死亡届？」

「店員さん、死亡届って。冗談キツイわ」

「冗談なんかじゃありませんよ。すぐ必要になりますから」

「はあ？何言ってんだコイツ」

ボクは無視してチケットだけ手にして外へ出た。

と、その時、ドーン、ガチャーン、という大きな音と、ドスンという鈍い音がした。

目の前にはクラッシュしたトラックとそのトラックにはねられたと思われるお爺さんが頭から血を流しうつ伏せの状態で横たわっていた。

お爺さんはピクりともしない。

たぶん即死だ。

急いで救急車を呼ぼうとした時、コンビニからさっきの店員が飛び出してきてボクにこう言った。

「ごめん、ごめん。渡す人、間違えちゃって。あんたじゃなくて、あんたの前のお客さん。そうそう、このおじいちゃん」

「…」

「最近うっかりミスが多くて困っちゃうよ笑笑笑」

と店員はピクリともしないお爺さんを見て照れながらボクに言った。