お調子者の小岩くん

それは、5年分成長したであろう、小岩くんだった！

面影がある！あの世でも成長するのだろうか？
髪はイガグリ頭ではなく、七三分けにしている
どういうシステムで手に入れたか分からないが、ちゃんとモーニングで正装までしていた

満面の笑顔で、人間業ではない高速拍手をし続けている彼は、かなり不気味であった

新郎新婦を見てみたら、あまりのことに固まっている
自分たちの着ている服よりも真っ白くなっていた

そんな二人に小岩くんは言った
『えへ、出て来ちゃった』

ザワザワザワ…

会場中が変な空気になった
小岩くんを、私たちクラスメートと先生以外は知らない
幽霊だとバレたら阿鼻叫喚の現場になる

「ど…」
嫌だ、どうしよう？
間違っても晴れの日に、新郎新婦に変なリアクションを取らせてはいけない！

その時、平井先生と大久保くんが、小岩くんのもとに走った
大久保くんは、手品で使ったシーツを持っている
そして二人で 小岩くんの前にシーツをかざし、彼を見えなくした

「この人は有名なマジシャンです、有難うございました」

と言いながら、後退って出入り口から消えていった

唖然とする参列者たちに、私らは、
「まさか、あんな有名なマジシャンが来てくれるなんて、高速拍手はどんな仕掛けがあるんだろうね」
「忙しいのに来てくれて良かったね」
「なんて言うか、凄いラッキーだね」
などと口々に言いまくった
勿論、本心ではない

不審者を誤魔化したかっただけだ！

すると、市川くんがマイクを持った
先生と大久保くんも、疲れた顔で戻ってきた
そんな二人に市川くんは頭を下げて、まずは参列者全員にお礼を言った