【悲しい灯 事件】-女子高生 朽屋 瑠子-
投稿者:kana (210)
ビフロンスは戦いながらある事に気が付いた。ルーカ神父や貴澄頼子は神の加護とも呼べる光のベールに包まれているのに対し、朽屋瑠子はそうではない。ただの人間に見えた。
おそらく格闘術などを身に着けて、体術には自信があるようだが、ただそれだけ。所詮ただの人間だ。襲うならまずやつから攻略し、なんなら人質にとって有利な展開に持ち込もう。そう思って攻撃を朽屋に集中した。
ビフロンスの爪の集中攻撃を受ける朽屋。鉄剣でそれらをはじきながら、スペルを唱える。
「ルキフェル・アスタロト・ベールゼブブ・・・ルキフェル・アスタロト・ベールゼブブ」
朽屋の周囲に禍々しい紫色のオーラがまとわりつき、やがて鉄剣に青い光が灯りだした。
「な、なんだ、この暗闇は・・・まるで我らと同じ・・・いや、これは・・・」
ビフロンスが最後に感じたのはまるで最凶の魔王のオーラだった。
そんなものに気を取られているうちに、朽屋は一瞬の間にビフロンスの左脚をすべて切り落とした。体勢を立て直す間もなく、今度は右の脚をルーカ神父と頼子がすべて切り落とす。
元の人型に戻ったビフロンスを鎧のまま踏みつける朽屋と頼子。
「さよなら、ビフなんとかのオッサン」と朽屋。
「滅せよ」と頼子。二人同時にビフロンスの左右の顔に剣を突き刺す。
「ぐはっ、なぜ私が人間ごときに・・・」そう断末魔を上げながらビフロンスは消滅した。
「はっ、悪魔はなんにもわかってないね。一番恐ろしいのは人間なんだよ」
そう言って鎧を解除する朽屋。
ルーカ神父はガーゴイルを下げ、結界も解除した。
そこには、ありふれた街並みが戻っていた。
・・・・・・
K女学園に通じる教会。そこにK氏と娘の陽菜、そして組織が迎えに向かったK氏の妻も一堂に会していた。ルーカ神父に、頼子、朽屋もいる。
ルーカ神父が事の詳細を説明する。
頼子は怖がっていたK氏家族らを安心させるためにヒーリングを行っていた。
朽屋は、少し眠くなってぼーっとしながら椅子にもたれかかっていた。
「陽菜さんの霊の事は、3年前から私も気にかけていました。しかし悪霊でもなく、私は警戒を解いていたのです。だが、悪魔はそこに隙を見つけたようで、父親に言葉巧みに近寄りました。あなたに強い恨みと、神を冒涜する心を持たせ、生贄を用意させることで陽菜さんにネクロマンシーの術をかけ、ゾンビ化し、そこから大勢の人間たちをゾンビにしてしまおうとしていたのです」
「私は・・・もう少しで大量殺人をし、娘を化け物にしてしまうところでした・・・どうかお許しください神父様・・・」とK氏がうなだれる。そしてつづける。
「神父様、私はどんな罰でもお受けします。この命を捧げても良い。だから・・・だから、
神様にお願いして、もう一度陽菜を生き返らせることはできないでしょうか・・・」
うつむいたままのK氏の目からポタポタと涙が落ちているのが判る。
「そのことなんだが・・・陽菜さん、あなたの口から直接言っておあげなさい」
ルーカ神父は霊体である陽菜に催促をした。
「あの・・・お父さん、お母さんも、いつもごめんね。・・・それで・・・陽菜もずっとこんなんじゃダメだっていうのが判って・・・天国に行こうと思うの」
顔を上げて陽菜を見るK氏。「て、天国へ・・・行ってしまう・・・天国へ・・・」
kamaです。朽屋瑠子第10作目は、VS 悪魔ビブロンス戦です。
今回はボクの作品の中でもとくに悲しく救われない話となっていた「悲しい灯(ともしび)」の解決編ともなっています。そちらも併せて読まれると、世界観が広がると思います。
お盆休みの暇な時間のお供に、ぜひどうぞ。
kamaです。誤字脱字などいくつか修正しております。もし見つけた方はお知らせください。よろしくお願いします。
いい話だ。
ただ、ちょっと長いで( ´∀`)。
いつも楽しく読ませて頂いております
クッチャルコ新作、待ってました!
心温まる話でハッピーエンド、いいストーリーでとても良かったです
次回作も期待してます
↑kamaです。コメントありがとうございます。ちっょと長いですが、これでもがんばって半分の長さにしました。半分って、すごい削除量でしょw
怖くは無かったけれど面白かったです。
怖いというか、詐欺師ってこうやってだましていくのかという別の怖さがあった。
陽菜ちゃんと同い年の中学生くらいの子たちに読んでほしい気がする
↑kamaです。コメントありがとうございます。
楽しんでいただけて何よりです。朽屋瑠子シリーズはボクが一番楽しんでいるので、同じ目線で見てくれている読者様にはとくに感謝いたします。残念ながら今回出番がかなり短いですけど、これも半分に削ったためですね。削る前のオリジナルでは朽屋が赤ちゃん言葉を使うシーンと、仲間にパンツ見られるシーンもありました。(どんどん怪談から遠くなるので削除)
・・・またいつか別の機会に。
一同に会するじゃなくて一堂だと思います
↑kamaです。ありがとうございます。修正させていただきました。本当に助かります。またなにかありましたらご指示よろしくお願いします。