追いかけてくる※※
投稿者:haruton (25)
竹林の中は意外にも涼やかだった。初夏には快適な場所だったんだよね。Tには先ほどの恐怖心がどこかに飛んでいってしまっていたんだ。Tは竹林をあちこち見ていたせいか、地面に躓いて転んじゃったんだよね。その拍子に左腕が竹とぶつかってしまったんだ。その時にビリッと紙が破れる音がした。
Tは両膝と左腕を擦りながら音のした方を向くと……なんかの紙が竹に貼ってあったんだ。
きっとTが転んだ際に引っ掛かって紙が破れたんだよ。その竹の周りを見てみると細長い紙切れが落ちていた。Tは拾って確かめた。そしてTは目を見開いてしまったんだ。
御札ーー?
なんでこんな所に御札があるんだろう?
Tの心臓は早鐘のように打った。そりゃそうだよね。驚くのも無理はないさ。
Tはしばらく破れた御札を眺めた。それから気付いたんだよ。
この御札ってーー虫除けの札じゃないか、ってね。
家の中にいつも貼ってあるやつに、どこかデザインが似ていたんだよ。そうと分かった途端に、Tは力が抜けた。
落ち着いてきたTはゆっくりと立って、さっきの竹に虫除けの札を張り直した。破れた切れ端は丸まってしまって貼れなくなったけれど、破れていないほうの個所をTは、丹念に強く撫でるように貼りなおした。
Tはこれでよしとした。安心したTは家に帰っていったんだよね。
余は思うんだよ。
なんでわざわざ竹に虫除けの札なんて貼ってあるんだろうって。
だってあれは家に虫が入らないために貼る札なんだよ?
なのになんで外にそれが貼ってあったんだ?
この後Tは大変なめに合うんだよ。
竹林の一件から……何か月かな?
恐らく7か月ぐらいの月日が経った頃かな。季節は冬になっていたんだ。
Tは学校から帰ってくるなりゲームをしていた。親がいない間はゲームが出来るチャンスだからね。それにTは新しいゲームを誕生日にかって貰ったから、そりゃあウキウキだった。Tがゲームに夢中になっていると耳障りな音が聞こえてきたんだ。
ブーン。ブゥゥン。
そう羽音が聞こえて来たんだよ。
はじめTはハエでも入ってきたのかなと思って、部屋の中を見まわした。するとカーテンの上に黒くて大きな虫が目に入ったんだ。
よく見るとハエじゃなくて蜂だった。
「いつの間に入ったんだ?」
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