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妖怪・風習・伝奇

kanaさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

【USAのUMA事件】-研修生 朽屋瑠子-
長編 2023/06/03 22:15 16,408view
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「実は今、フォートブラッグに日本から一人、研修生が来ていてね・・・これがなかなかおもしろい能力を持つ人物なんだ。・・・試しにソレをぶつけてみてもいいかもしれない」

「大佐、大丈夫なのかね、そんな、日本から来た研修生だなんて・・・自衛隊員かね?」

「いえ、詳しくは特記事項なのでお答えしにくいのですが・・・今、16歳の女子です」

「16才?ティーンエイジャーをあの化け物にぶつけようというのかね、大佐は」

「えぇ、自分でも笑ってしまいそうになるんですが、やってみる価値はあるかと思います」

会議は紛糾したものの、早急にできる代案もなく、とりあえず大佐が全責任を負うという事で作戦の許可が降りた。以後、会議ではその巨大な化け物を「ベヒーモス」というコードネームで呼んだ。

・・・・・・

ノースカロライナ州フォートブラッグ。そこにはアメリカでも最大級の陸軍基地がある。
ジョン・F・ケネディ特殊戦センター&スクールに属する第2特殊戦訓練グループでは、グリンベレー向けの軍事特技・語学・その他上級訓練を担当している。

前述のロジャー・スミス大佐はここの司令官でもあった。

「クッチャルコ サンハー イマスカ?」たどたどしい日本語で叫ぶ兵士。

「ハイ! 朽屋 瑠子 ここにおります!」ビシっと敬礼をする朽屋。

「ユー、テキサスへ、トベ」

「イェッサー!・・・・・・テ、テキサスぅ?」

日本から軍事訓練のためにフォートブラッグへ派遣されていた朽屋瑠子は、突然の命令を受け、ポープフィールド空港からテキサス州のウィチタ・フォールズ・リージョナル空港まで空軍の小型輸送機に乗り、約6時間ほどかけて飛んだ。

朽屋はその間にロジャー・スミス大佐から連絡を受け、作戦内容を聞かされた。
それ以外は眠って体を休めた。

ところで朽屋瑠子はなぜアメリカにいるのか・・・。

1年前、日本で魔物と化したダヴィデ神父との戦いの際、そこに現れた三体の悪魔、ルキフェル、アスタロト、ベールゼブブがダヴィデに与えようとした魔力刻印を朽屋が全身で受け止め、瀕死の重傷となっていた。それを救ったのが今ではすっかりパートナーとなった貴澄頼子と法王騎士団のルーカ神父、それに日本の裏側で暗躍していた封魔組織だ。

とくに封魔組織は対魔力系のノウハウを持ち、朽屋の生還に大いに寄与した。今回のアメリカ派遣も封魔組織と米軍の繋がりのおかげでもある。朽屋はアメリカで1年間の研修を受け、銃器をはじめとする武器の取り扱いや戦術などを学んだ。
その後、1年遅れでK学園高等部へ復帰したことになる。

閑話休題。話をテキサスへ戻そう。

テキサスへ降り立った朽屋を出迎えたのは、いかにも屈強そうな軍人だった。
「バーナード軍曹です。ご案内しますクッチャルコサン」敬礼しながら言う。が、目は笑ってない。まるでアーノルド・シュワルツネッガーのように筋骨隆々としている。

2時間ほどクルマで移動し、現場近くの仮設ベースに到着する。
そこにはロジャー・スミス大佐が待ち構えていた。

「ルコ、待っていたよ」スムーズに日本語で挨拶して朽屋と握手する大佐。

「日本語お上手ですね」

「あぁ、私はキャンプ・座間にいたこともあるんだよ。それじゃあ、詳しい作戦内容を説明するからミーティングルームへ行こう」

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コメント(12)
  • kamaです。
    朽屋瑠子シリーズも今作で7作目となりました。過去作品もお読みいただくと、より世界観が広がると思います。よろしくお願いします。
    今回のお話は、朽屋瑠子シリーズの中でも最も長編となった【より子ちゃん事件】で瀕死の状態になった朽屋が復活する過程でアメリカに研修に行っていた時のお話になります。
    朽屋シリーズは時系列がバラバラなのはご了承ください。
    ロマンホラーって感じで、気軽に楽しんでいただければと思います。
    また誤字などありましたらお気軽にお知らせください。

    2023/06/03/22:21
  • 先生の久しぶりの力作を楽しみです。

    2023/06/04/01:44
  • ↑kamaです。毎度読んでいただきありがとうございます。
    朽屋瑠子シリーズは別に怪談としてぜんぜん怖くないし、なんなら中二病全開で、話も長くてYoutubeでも2回くらいしか朗読されたことありませんが、自分で書いてて一番楽しいです。
    えぇ、これが自己満足の世界というやつです。

    2023/06/04/11:16
  • 「沖縄のキャンプ座間」が気になってしまいました。沖縄なのか座間なのか。今後のストーリーに影響なければ流すのですが。

    2023/06/04/20:21
  • ↑kamaです。設定のご指摘ありがとうございます。「沖縄」をはずさせていただきました。
    実は最初に書いた原稿で、大佐が沖縄のキャンプシュワブにいた設定にしていたのですが、
    ご存じの通りキャンプシュワブは米海兵隊の基地で、グリンベレーと海兵隊の協力関係があったという設定もできますが、やはり陸軍は陸軍ということで、途中で座間に変えたのですが、沖縄のまま進めてしまいました。ご指摘大変ありがたいです。またなにかおかしなところがあったら教えてください。

    2023/06/04/21:08
  • ラストの方でチョコバーを差し入れるマーベリックがかわいくてちょっと萌えました。

    2023/06/05/08:04
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。萌えは大事ですね。

    2023/06/05/18:35
  • 学業と訓練の二刀流の瑠子、カッコいい!

    2023/06/05/19:30
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。でも、実質1年留年です。そこはテヘペロです。

    2023/06/05/21:05
  • ちょっと待て、16歳の太ももで三角締めって、ご褒美じゃねーか!

    2023/06/07/12:40
  • 最近、射撃場という言葉をよく目にする。ひとつはこの作品。もうひとつは自衛隊のニュース。

    2023/06/14/22:06
  • 出だしのセリフ、北斗の拳かと思った。

    2023/07/01/17:14

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