アジサイガ サイタヨ
投稿者:kana (210)
「えぇ、あれはボクと母とで丹精込めて育てたアジサイなんです。特別な肥料をあげていて、これからもっと増やしていきたいなぁと思っていたところなんですよ」
「へぇ、そうなの・・・」
「ちょっと見に行きますか? 裏口から行けば近くで鑑賞できますよ」
「えぇ、ぜひ」
「では、玄関から靴と傘を持ってきますね・・・そうだ、雨が降っているのでボクはレインコートを着ますね。ちょっとお待ちください」
ボクは上下のレインコートをしっかり着込んで、お婆さんの元へ急いだ。
「おまたせしました。それでは行きましょう」
裏口の玄関に降り、おばあさんをドアの前に立たせた。
そしておもむろに、立てかけておいたスコップを振り上げ、お婆さんの背後から思い切り頭を叩きつけた。
ガーンと鈍く大きな音が響き渡り、声もたてず倒れるお婆さん。
全身が、まるでつり上げた小魚のようにピチピチと痙攣している。
白目をむき、信じられない量の鼻血がビュービューと噴き出している。
「うわっ」・・・さすがにキモイ。ボクは薄汚れた玄関マットをお婆さんの顔にかけ、見ないようにした。
「うわ~・・・どうしよう・・・」
返り血よけのレインコートを脱ぎながらボクは考えた。
まさか倒れてあんなに血を出すなんて。
「お母さんの時とは違うなぁ。人が死ぬときって、いろいろなんだなぁ」
そう感心しながら、一旦リビングに戻り、まだ暖かい残りのアールグレイを飲んで落ち着くことにした。
「そうだ、お婆さんを埋めるのに体力を使うから、今のうちに少し眠ろう。お片付けはその後だ。深夜の方が人目にもつかないしね」
ボクはそこからシャワーを軽く浴びて、寝室でひと眠りすることにした。
眠りにつく寸前、母親のことを思い出していた。
いつも嘘ばかりついて、ボクをいじめていた母親。
本当の母親でもないくせに、エラそうにして。
「でも母さん、前に言ってましたよね。アジサイの下に死体を埋めると、花の色が変わるんだって。そんなこと言うから、ボクは試したくなっちゃったんですよ。でも、やってみたら本当に花の色が変わりました。母さん、それだけは本当だったんだね。母さんに見せられないのがちょっと残念だけどね・・・。今日のお婆さん、母さんの隣に埋めてあげるから仲良くしてね」
だんだん眠くなってきた。
「半年したら、お父さんも行くから待っててね・・・おやすみなさい・・・」
kamaです。こちらの作品はちょうど1年前の6月によそで発表した「アジサイが咲いたよ」という作品の加筆修正版となります。前作が青年の独白でストーリーが進行し、最後にアジサイを見るお婆さんを殺害しようとするシーンで終わるモヤモヤした恐怖を残す作品だったのを、今回はプロットは変えずに、最初からお婆さん殺害をメインにしたサイコスリラー調に変えました。殺害方法はご存じの方もいるかと思いますが、某サイコ映画のオマージュです。
鼻字…(´∀`)
死体って樹木植物の栄養には適していると聞いたことがあります。
↑↑kamaです。誤字指摘ありがとうございます!!ぜんぜん気付きませんでした!
よくやっちゃうんです。自分で見つけたものはちょくちょく直しているのですが、
注意力散漫で見逃します! ですのでご指摘本当にありがたいです!!
またあったらこっそり教えてください!!
↑死体・・・そうなんですね。そういえば「土に還る」なんていいますから、案外自然なことなのかもしれないですね。
あじさいを見てただけなのに。お婆さん可哀想。
↑kamaです。コメントありがとうございます。理不尽ですよね。
最近もあったような・・・。理不尽な殺人が一番やるせないし、怖いです。
自然界は、人間が理不尽と思うことは普通にある。人間が勝手に作ったルールから外れると理不尽。だから、この話は至って普通。胸糞悪い、って言うのも似たようなものかな。
あまりに残酷過ぎないかと話題になっておりますこちらの作品ですが、本日、解決編として【アジサイ事件】-事件記者 朽屋瑠子ーを公開させていただきました。両方お読みいただくと楽しさ倍増と思います。ご覧ください。