朝?いや昼を過ぎていた。
「今日の講義いなかったけどどうしたんー?Aも来てないし」
寝坊した。講義をすっぽかしてしまった。
しかしそれよりも気になるのは、昨日の出来事の後味と、そこから来るのか、私もベッドも少し湿っているような違和を感じることであった。
謎のストーカー、昨日家に帰るまでに起こった出来事は実際に体験したものであるため、悪い夢でも見たんだろうと考え、Aは大丈夫かなと少し思った。
しかし、夜中の出来事は、あながち夢ではなかったのかもしれない。
玄関に行くと、明らかに濡れた足で踏んだであろう、乾きかけの足跡があった。ほら、玄関のコンクリートみたいな素材って、濡れた足で踏むと少し色が濃くなって足跡がつくでしょう?あれ暫くしたら乾くけど少し足の輪郭が見えるじゃん。あんな感じの。
不気味さを感じたが、昨日のこともあるし、Aが心配になった。
電話しても出ない。ただ、昨日Aと電話をつなげていた最後に聞こえたあの布の擦れるような音、水に溺れるような音、奇妙な声…。
Aのことは心配だったが、本当に体調が悪かったため、親友に「Aと昨日電話してて、心配なことがあった。家を訪ねてみてほしい」と伝え、その日はゆっくり休むことにした。
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次に目覚めたのは、病院のベッドだった。
なぜここにいるかは全然覚えていないが、病院の先生によると、私は極度の疲労と自律神経の乱れでふらふらになっていたようで、自分で救急車を呼んでいたようだ。たいしたことではないが、とりあえず二日前から点滴をしていて、目を覚まさなかったみたいだ。
疲れだけで入院することもあるんか~と、我ながら不思議に思った。
充電器につないであるスマホが目に入った。看護師さんが気を利かせて充電してくれたのだろう。
通知を見ると、おびただしいほどの、彼女からの電話。
三日間も音信不通だとさすがに心配させちゃったかと思い、すぐに病院のロビーまで行って彼女に電話を掛けた。
「どうしたの!? 大丈夫!?」と彼女の聞きなれた声。安心した。
怪談話とかは苦手な彼女だったので、身に起きた出来事は話さずに「なんか季節風邪で入院しちゃってた~ごめんな」などと軽い説明をした。「季節風邪で2日間も入院するわけないでしょ!w」と彼女の安心する声。医学部の彼女にバレバレな嘘をついてしまった。
「めっちゃ怖い体験したんだからね~!電話に出てくれなくて本当に寂しかった!!」
と彼女が言う。どうやら怖い体験をしたようだ。
彼女は実家通いの大学生だったのだが、二日前の夜、明らかに母ではない女性が、寝ている自分の耳元でささやいていたという。
「・・・モウダイジョウブダカラ・・・メイワク・・カケタ・・・ゴメンネ・・」
と言われたという。
怖いの大嫌いな彼女がそんな経験をするんだ。彼女は一瞬で気を失って、次目覚めたのは朝5時。必死で私に電話をかけてたらしい。
電話通知を見ると、昨日の朝5時から7時まで、途切れなく彼女からの電話通知が来ていた。いやすまんすまん、と思った。
次の日には退院し、その次の日には普通の生活に戻った。大学にはいつも通りAはいた。
バイト帰りの夜道にも、ストーカーは現れなくなった。ストーカーなのか?幽霊なのか?なんだか明らかに人外な気がするが、そいつはその後三日たっても現れなかったので安堵した。
よくわからなかったが解決したようだ。
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読んでいる途中から生霊だと思っていましたが違うパターンで怖かったです。
早目に彼女がいる事を伝えるべきでしたね。
最後えぐぅ
ガチ面白かったです
実は本物のAがお風呂に死体となって後日発見されたって展開だったら怖かったのになぁ。
2023/06/02/16:51様
ありがとうございます。
まぁでも本当に恋愛感情なくても距離が近い女の子ってよくいるじゃないですか。「俺彼女いるよ」とかわざわざ伝えたら逆に恥ずかしい思いとか気まずくなる可能性あるので…
かいりんぬ
2023/06/12/15:06様
長尺作品ですが楽しんでいただけて私も満足です。
かいりんぬ
2023/06/15/13:48様
このお話って8割実体験で2割脚色なんですけど、話の大事な部分を書くために、2割の脚色でAを殺すことはできなかったです。精進します。
かいりんぬ