顔が見えないストーカー
投稿者:かいりんぬ (2)
「あ!ユキちゃん(ネコの名前)!見せて見せて」と言ってきたので、ついでにAにうり二つの格好をしているストーカーを見せてやろうと、LINE電話でカメラをオンにしてみた。
これでとても恐ろしい出来事が起こる。
私は、カメラをオンにしたあと、とりあえずネコを見せて、そこからは画面を見らずにベンチに座るストーカーを見ながら、「ほら、あいつがストーカーなんだよ」と、カメラを向けるのだった。
すると、Aが不思議なことを言う。
「ベンチ?ユキちゃんがベンチに怒ってる。ベンチには誰m・・・・・」
この瞬間に、Aの電話からバリバリバリ、バリバリバリといった音が鳴る。ほら、マイクを服とかタオルとかでこすったらえげつない音が鳴るじゃん。あの音が鳴ってひどく驚いた。
「A!何してるん!」
と私はスマホの画面をのぞき込んだ。カメラ越しに映ったその画面には、威嚇するネコ、ベンチが見えるだけである。そう、あの女の姿は見えない。
おかしいと思い自分の目で見直した。ストーカー女はいる。もう一度カメラ越しに見た。ストーカー女はいない。
奴はカメラには映らない。生き物の目にだけ見える存在なのだ。
「A!大丈夫か!!」
とスマホを耳に当てて聞いた。すると、さっきの音とは違って「ごぼごぼごぼっ」といった、水の中に沈むような音に変わっていた。
ベンチに座っていたストーカー女の方を見る。姿は見えない。居なくなった。
電話先のAの水中に沈むような音はまだ止まらない。その音の中から、溺れながら出すようなAの声が聞こえた。
「ゴメ…ンネ…」
私は怖くなり、最短ルートで家に帰ってベッドに飛び込んだ。気疲れしていたせいか、すぐに寝てしまったようだった。
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その深夜、何かの違和感で目が覚めた。
確実に抱きつかれている。そして、頬をつけられている。
間違いない。Aだ。Aに告白されたときのあの状況によく似ている。Aがよく付けているインカントチャームの香り。(香水わかるなんてキモとか思わないでほしい。Aとは雑談で好きな香水の話したことがあって、それで知ってただけ)
しかし、私に抱き着いているAはびしょ濡れだった。私に巻き付いた腕、髪の毛、頬のすべてが濡れていて冷たい。
そして、私は動けなくなっていた。授業中に居眠りしたとき、たまにどんだけ力を入れても体が動かせなくなる時があるだろう。あの感じ。これを「金縛り」というのだろう。
金縛りって目は動かせるんだ。しかし、見てはいけない。そんな気がした。
その気持ちが好奇心に負けた私は、目を開いて、見てみることにした。
Aだと思ったそれは、私が知っているAでは無かった。
こんなにも近くにいるのに、顔を見ることができない。というか、顔が影のように黒くて確認ができないのだ。
「スキ…ゴメ…ンネ」
そういわれた瞬間に、また気を失ってしまった。
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次の日の朝、親友からの電話で目が覚めた。
読んでいる途中から生霊だと思っていましたが違うパターンで怖かったです。
早目に彼女がいる事を伝えるべきでしたね。
最後えぐぅ
ガチ面白かったです
実は本物のAがお風呂に死体となって後日発見されたって展開だったら怖かったのになぁ。
2023/06/02/16:51様
ありがとうございます。
まぁでも本当に恋愛感情なくても距離が近い女の子ってよくいるじゃないですか。「俺彼女いるよ」とかわざわざ伝えたら逆に恥ずかしい思いとか気まずくなる可能性あるので…
かいりんぬ
2023/06/12/15:06様
長尺作品ですが楽しんでいただけて私も満足です。
かいりんぬ
2023/06/15/13:48様
このお話って8割実体験で2割脚色なんですけど、話の大事な部分を書くために、2割の脚色でAを殺すことはできなかったです。精進します。
かいりんぬ