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心霊

バクシマさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

蠱毒
長編 2023/05/23 16:11 10,364view
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ジャリ・・・

近くで地面を擦る音がした。
男は女のすぐそばにいた
倒れた女がなんとか顔を見上げると、目線の先にはギラリと光る白刃があった。
・・・道着姿の男の手には、短刀が握られていた。
道着男「ミヤジセンパァイ タントウドリ ヤリマショォォォ!!」
道着男は声を張り上げた。
だが、女は身体を動かせないまま喚くことしかできない。
鍋女「ひぃ!!あなた誰よ!それにアタシはミヤジなんて名前じゃないわよ!?」
道着男「トボケナイデクダサイヨォ コンナトコロニ ミヤジセンパイ イガイニ ダレガイルンデスカァ」
男は女に手を伸ばす。
もう駄目だ・・・女は死を覚悟した。
しかし、まさに男の手が女に触れようというその瞬間・・・
❔❔「待てぇぇぇぇぇい!!!」
廃墟に新たな漢(おとこ)の雄叫びが響く
道着男と鍋女は声の方を振り向いた。
そこには身の丈が五尺三寸(約1.6m)はあろうかという中背男が立っていた。
そして、なぜか女物のスニーカーを一足、大事そうに手に抱えているではないか。
その靴男は酔っ払いのような、よたよたとした足取りで男女に近づく。
そして、おもむろに彼等の足をまじまじと眺めるのだ。
「ナ、ナニ ジロジロ ミテルンデスカ・・・」
道着男も突然の乱入に戸惑っているようだ。
デカい図体の割に、案外小心者なのかもしれない。
靴男は、おもむろに道着男の裸足にスニーカーを当てがった。
当然ながら道着男の足には入らなさそうである。
靴男「ちがう・・・・・」
そう呟き、次に鍋女の足を眺めた。
そして、何の断りもいれず鍋女の靴を脱がし、道着男にしたように、スニーカーを当てがった。
・・・スニーカーはぴったりと鍋女の足に収まった。

すると靴男は鍋女の顔を満面の笑みで見やると・・・
靴男「みつけたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
鍋女「ぎゃああああああああああ」 
鍋女は逃げ出したいが、階段から転倒したダメージはかなりのものだったらしく、やはりまだ動けないのだった。
靴男「あなたを探していたんですよぉぉぉ」
鍋女「あなた誰よ!アタシは、あなたなんか知らな・・・」
その時、鍋女は靴男の顔にハッとした。
思い出した。
こいつ、アタシの獲物だった奴・・・
そんな・・・この状況はアタシが巻いた種だったのね・・・
鍋女は観念した。
靴男は鍋女に手を伸ばす。
これでおしまいね・・・
女は死を覚悟した。
しかし、まさに男の手が女に触れようというその瞬間・・・
パシッ!!!
これから行われるであろう蛮行を制するように、
漢・道着男が、靴男の手首を力強く掴んだ。
靴男「・・・なんだぁ?テメェ?」
道着男「この人は、僕が先に見つけたんですよ?」
靴男「・・・上等だ!!」
靴男は、道着男のみぞおちに思い切り肘打ちをくらわした。
道着男は苦悶の表情を見せたが、すぐさま体格差を利用して靴男のベルトを掴み、投げ飛ばした。
しかし、靴男もまた、すぐに立ち上がり道着男を睨みつける。
鍋女はそのやりとりを呆然と眺める
鍋女「こ、これは・・・・」
二匹の雄が互いの持てる力を振り絞りぶつかり合っている。
各々が探し求めた女性のために。
・・・そう、自分のために。

鍋女「良い・・・」
女は、男達が自分をめぐり争っている状況に愉悦を感じた。
女の妄想は加速していく。
きっとこの闘いは、どちらかが命を落とすまでは続くのだろう。そして勝者はアタシというトロフィーを手にしたなら、毎日アタシの作る鍋に舌鼓を打たされるのだ・・・
ダメ!!毎日なんて!!そんなの困るわ!!!
鍋女「ふたりともやめて!!アタシで争わないで!!」
老人幽霊「無駄じゃよ。あやつら聞く耳をもっておらん。」
鍋女「くっ、それなら身体を張るまでだわ!!」
道着男は手刀、靴男は頭突きを互いに放つ。
まさにその攻撃が交差する刹那・・・
身体の痛みはどこに去ったのか
鍋女は脱兎の如き素早い動きで、道着男と靴男の間に飛び込んだ。
道着男・靴男「「 なっ!? 」」
男達は攻撃を止めようとしたが、勢いづいてしまった手刀と頭突きは、女の身体に浅浅と打ち込まれてしまった。
それはデコピン程度の衝撃であるはずだが
鍋女「うぐ・・」
・・・なぜか女はその場で崩れ落ちた。
男達は数秒唖然としたが、すぐに我に返った。
そして男達は跪き、女の顔を気遣うように覗き込んだ。
靴男「なんで・・こんなことに・・・」
道着男「そんな・・せっかく会えたのに・・・」
男達は目を赤くして泣いた。
涙が頬を伝って地面にポタリと落ちる。
すると、女はかすかに目を開いて男達に語りかける。
鍋女「いいのよ・・アタシのために争うところなんて・・見ていられないわ・・・」
女は、優しげに微笑んだ。
その顔は、どういうわけか満足気であったそうな。
道着男「・・起きて・・起きてくださいよ・・僕と短刀取りの稽古するんでしょ・・・宮地先輩・・・」
かすれるような声が、道着男の口からこぼれ落ちる。

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コメント(1)
  • 何だか最後までわからない話ですね。

    2023/05/23/21:27

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