旧道M峠沿いのドライブイン【やすらぎ】
投稿者:ねこじろう (149)
それは梅雨の晴れ間のある日のこと。
昼過ぎから一人、バイクで北に向かったんだ。
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空は薄曇りだったけど、まあまあ心地よい走りを体感出来ていたと思う。
小一時間で市街地を抜け、正面彼方に連なる山々を臨みながら、緩やかな坂道を登り進んでいく。
やがて有料トンネル入口の看板が見えてきたが、俺は右方にカーブし、旧道のM峠の方へ進んで行った。
この峠は44のカーブがある、ちょっとした難所で、地元のバイカーたちの腕試しの場所として有名なところだ。
左手にはガードレール、右手には山肌が迫る二車線の山道をどんどん走って行く。
5回めのカーブを通過したくらいだったか?何気に彼方を見ると、いつからだろう空は墨汁をこぼしたように不穏になっていた。
─ヤバイな、これは一雨くるかな
と思いながら次の左への大きなカーブを曲がると、右前方に忽然とドライブインの看板が見えてきた。
─「ドライブインやすらぎ」か、
少し小腹も空いてきたしことだし、ちょっと寄るか。
ウインカーを出し、砂利で敷き詰められた駐車場に入っていく。
だだっ広い駐車場には一台の車も停まっていない。
プレハブ造りで平屋建ての店舗前にバイクを停める。
正面の外観からはかなり古い店のような感じだ。
入口前のショーケースを覗いてみる。
ガラスがかなりよごれていて、何の料理のサンプルが並んでいるのかさえ判別出来ない。
─だいたい、この店営業しているのか?
などと不安になっていると、首筋に冷たいものがポトリと落ちてきた。
俺は慌てて透明の入口ドアを押して中に入る。
ほぼ同時に、ぼとぼとという雨音が耳に飛び込んできた。
振り返りドア越しに外を見ると、薄暗くてバケツをひっくり返したようにかなり激しく降っている。
ホッと一息つき、改めて店内を一覧した。
どこか寒々しく、どんよりとした空気が漂っている。
正面奥には長めのカウンターがある。
その右端の辺りに作業員風の男が3名座り、何やらボソボソと親密に語り合っている。
その手前の広目のスペースに、安っぽい四人掛けテーブルがいくつか置かれている。
その一つに若い夫婦と幼い女の子という家族らしき3人が座り、食事の最中のようだ。
不思議な体験でしたね。
残留思念みたいなものが白昼夢を見せたのでしょうか
残留思念、、、面白い考えですね
fromねこじろう
二番目のコメントの人が指摘した通りが近いと思う。