ある男性から聞いた話。
彼が実家に住んでいた頃、地元にちょっとした有名人が居た。といっても、言葉を選ばずに言うなら『変な人』の方の有名人のこと。その男は放課後の学校や公園によく出没したという。まだ様々なことに世間が寛容な時代で、男性自身もよく遊んでもらっていた。
「明日は土砂降りだなぁ〜、傘忘れんなよ」
「あそこのコンビニのアイス、一番上のひっくり返ってるやつ買ってみな。当たるよ〜」
男は時々こんなことを言う。そして、その通りになる。何故分かるのかと質問するとこう答える。
「未来からきたんでな〜、全部知ってるんよ」
というわけで、その男は『未来オヤジ』と呼ばれていた。
それは高校生最後の秋のこと。男性は友人と一緒に受験勉強の息抜きをしていた。コンビニで買ったお菓子やジュースを携えて公園でだべっていたところ、未来オヤジを見かけた。
おう、おっちゃん今日も元気?なんか食う?
「あぁ、かたじけない〜」
未来オヤジは地元の若者にとってマスコット的なキャラで、会えばだいたいこうなる。お菓子をつまみながら暫く3人で他愛もない雑談をした。
「おっちゃんさ、未来が分かるのってどんな感じ?」
「本を後ろのページから捲っとる感じかの〜」
「何それ、例えが上手過ぎてよく分からん」
友人と未来オヤジの会話。未来オヤジは本物の未来人というテイで接するのが基本スタンスだ。
日も暮れてきて、そろそろ帰るかと友人が自転車のスタンドを起こした。それに習って男性も自転車のカゴへお菓子の残りを入れていると、その背中に向かって未来オヤジがこんなことを言った。
「お菓子の御礼ね〜。お別れ、ちゃんとしときなよ〜」
そのときは未来オヤジの言いたいことが理解できなかったので、またなとだけ声をかけて友人を追った。喋りながら自転車を漕ぎ、やがていつもの分かれ道に辿り着く。男性の家は右の道、友人の家は左の道。
「じゃあね」
いつも通りの解散。ただ、その日は何故か靴に小石が入ったような居心地の悪さを覚えた。
…なぁ!また明日学校で!
自然と、友人に向かって声をかけていた。それを聞いた友人は自転車から降りてこちらに向き直る。
「おれさ、お前と友達になれて幸せだよ。ホントにそう思ってる、ありがとな」
え、なんだよ急に、気色悪い…
問いかけには答えず、友人は自転車に跨って行ってしまった。
友人の訃報を聞いたのはその翌日の昼頃だった。
遺体は近くの山の中で見つかった。10歳くらい年上の女性と、隣り合わせで首を吊って死んでたらしい。駆け落ちの末に二人で死んだとか、暴力団の女に手を出して殺されたとか、どいつもこいつも言いたい放題、全部デタラメだ。だが友人は死んだ。最も信じたくない箇所だけはどうやら本当だった。
死に方がショッキングなためか、親族以外は通夜・葬儀に参加できなかった。代わりに三年生全員で一羽ずつ鶴を作り、千羽鶴にして遺族へ渡すことになった。
おれは折り紙以下かよ…
自分が作った折り鶴を見ていると無性に腹が立ってきて、提出せずポケットに突っ込んだ。























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