ものすごいスピードで走り寄ってくる化け物。朽屋もゆっくりとそちらに足を向ける。
歩きながらも何か静かに詠唱し始める。
「いざ堕天の子ら地より蘇らん・・・人に災いなす者・・・偽らんとする者の魂を・・・」
猛スピードの化け物が、朽屋の目の前まで迫っている。
短槍をくるくると回しながら戦闘態勢に入る朽屋。
だが、朽屋の霊力は先ほどの弾丸に使ってしまったため、今持っている短槍には朽屋の霊力が込められていない。普通の短槍である。
恐ろしく俊敏な猛獣のような影が、ジャンプして朽屋に飛び掛かる。
もはやそれは、顔だけがお婆さんで、首から下がしなやかな猛獣のような姿になっており、
振り上げられた長く鋭い爪を朽屋の短槍が受け止めている。
周囲に金属音が鳴り響く。
そのまま一旦退いて朽屋を低い位置から睨む化け猫のような妖獣。
巨大な口を開けて朽屋を威嚇する!
「・・・汝の業火で焼き尽くせ・・・出でよ!!地獄の番犬!!」
朽屋がそう叫ぶと、今まで威嚇を続けていた化け物が急に苦しみだした。様子が変だ。
そう思った瞬間、激しく血反吐を吐き出した。
「レアンカルナシオン!!」
朽屋が叫ぶと、化け物の身体が一瞬ブクっと膨らんだかのように見え、
次の瞬間には爆発して木っ端微塵となった。
・・・が、その血煙の中から、なにか巨大な影がむっくりと起き上がった。
それは真っ黒で、狼のような頭を三つ持った獣・・・『地獄の番犬』ケルベロスであった。
「ケルベロス!!」
ケルベロスの三つの頭が、地獄から響き渡るように「グオォォォ!」と吠えた。
吠え終わると、今度はゆっくりとその大きな前足を一歩また一歩と朽屋の方へ繰り出した。
朽屋も一歩一歩とケルベロスに近づく。
(朽屋様・・・ご無事ですか?)ケルベロスが朽屋の脳内に直接語り掛けてきた。
「ケルベロスこそ無事だった!?」朽屋はそう言いながらケルベロスのセンターの頭に抱き着いた。それを左右の頭が撫でこすりながら朽屋の顔をぺろぺろ舐めだした。
「あはは、ごめんね、私の腕が悪いばっかりにプランBになっちゃって・・・」
朽屋たちの作戦は、プランAが仔猫をエサに、飛び出してきた敵を狙撃。
プランBが、仔猫を食べられた場合に、仔猫を形作る魔力の根源となっていたケルベロスの卵を孵化させて内部から敵を葬ると言うものだった。
ケルベロスは、以前朽屋の狙撃によって死亡した魔獣であるが、その後、組織に回収され、輪廻転生措置を受け再教育され、卵の形の結晶状態に封印されていたのだ。
それを今、朽屋が解放したというわけだ。






















kamaです。先日投稿させていただいた「仔猫」というお話の後日談となりますので、合わせて読まれると楽しさ倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で5作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズ、とくにケルベロスが登場する1作目を読まれると、世界観が広がって楽しめるかと思います。
朽屋瑠子シリーズは、自分で書いてて自分が一番楽しんでるかもしれません。
次回作もお楽しみに~
後日談待ってました!瑠子が見た猫の夢が仕事に繋がった所も不思議ですが、お茶目で可愛らしい一面が見られました。ケルベロスが従順になったのも猫好きの瑠子だからかな?ちゅーるのくだりがクスっと笑えました!
↑kamaです。ありがとうございました。
実はケルベロスはいろいろな伝説の中で、パンなどの食べ物をもらってごまかされることが多く、甘いもの好きとも言われています。チュールはおいしかったのかもしれませんね。
なんとびっくり、麗子の怪談恐怖箱さんで、この作品が朗読されてる!