「待て」
「なぜ止めるのです、ベールゼブブ様」
「囲まれた。この地はすでに囲まれておる」
「皆殺しにしてやります!」
「若いなアスタロト殿。この極東の島国は太古の昔から八百万の神が支配する土地でな。
我ら欧州で生まれた魔族が本領を発揮するには、分が悪い」
「しかし・・・」
「アスタロト殿、なにもこんな余興でつまらぬ怪我をする必要もあるまいて」
「ぬぅぅ、しかし、一矢報いねば気が収まらぬ」
そう言ってアスタロトは2本の矢を同時に放ち、教会の屋根の上から狙撃をしていた二人のスナイパーを簡単に射貫いた。矢はそのまま教会の屋根も壁も貫通し、炎を吹き上げた。
まだ気が収まらないアスタロトはギロっと朽屋瑠子を見定めた。
「やはりあの小娘は気に入りません。あやつのせいで場の流れが変わってしまった」
そう言ってアスタロトは1本の矢を朽屋に向かって撃ちこんだ。
「まったく、おぬしは気が短いのぅ」半ば呆れてベールゼブブが言う。「つまらぬ」
だが、アスタロトの強大な矢は、朽屋に届く前に弾き飛ばされた。
「ナニ!?」
そこには、ルーカ神父と、涼の家から間一髪で舞い戻ったより子が立っていた。
「私の友達に、指一本触れさせないんだから!」今まで見せたこともないような怒りの顔で悪魔たちを睨むより子。
「くっ!」アスタロトが唇をかむ。
「オイオイ、小さな天使様までお出ましじゃあないか。こわいこわい」
ベールゼブブがニヤケる。
「もう良い。興が削がれたわ。こんな辺境のざれごとで、神々どもの使いと一戦交えてどうする。戻るぞ」さっさと空間の裂け目に消えていくルキフェル。
それを追うベールゼブブ。キッとより子たちを睨みつけてから消えるアスタロト。
ダヴィデ神父が呼び出した悪魔たちは姿を消した。
朽屋の短槍とルーカ神父の雷撃をくらって瀕死だったダヴィデは、この隙に徐々に回復して行った。狙撃によって撃ち落されたアスタロトの使い魔たちの死骸もいくつか取り込み、ダヴィデの体はヘドロがうごめくようにさらに大きくなっていった。
周囲には瘴気があふれ、魑魅魍魎がうごめき出す。
「ダヴィデ神父。観念なされよ。あなたが呼んだ悪魔どもは退散した。もはやこれまで」
ルーカ神父は十字架を収めた剣を眼前に立て、気合を込める。
ほとばしる光と共に、ダヴィデの周囲にいた魑魅魍魎も瘴気も一瞬で吹き飛ばされる。
大剣を振り上げ、ルーカ神父に襲い掛かろうとするダヴィデ。
だが、またしてもどこかから狙撃が行われ、ダヴィデの大剣は甲高い金属音と共に折れてしまった。その隙を狙ってルーカ神父が間合いを詰め、折れた大剣を握りしめているダヴィデの右腕を切り落とした。
























kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!