畜生道の娘
投稿者:LAMY (11)
そんな加奈さんだが、私にこの話を提供していただくにあたって、お母さんにもう一度この体験について話してみたらしい。
すると彼女の母は、意外にも娘から過去に聞いたこの摩訶不思議な体験について、「よく覚えてるよ」と返したというのだ。
『子供に言うような話じゃなかったから、あんたに言うようなことはしなかったんだけどね。
あの繭子ちゃんって、病気は病気でも心の……精神の方の病気で入院してたのよ。
だけど入院中に、心臓の発作か何か起こしちゃったらしくて――それで亡くなったらしいの』
そんな、言っては何だが奇妙な経緯で繭子ちゃんが亡くなったことを知っていたから、お母さんは内心気味悪く感じていた。
病状については流石に聞き及んでいなかったそうだが、”ある日から、急におかしくなってしまった”というようなことを聞いていたそうだ。
繭子ちゃんが亡くなるまでのそうした経緯と、あの日の一連の体験に関連性があるのかどうかは、分からない。
ただ、と。加奈さんは、表情を曇らせながら付け加えた。
「人の顔をした犬と、それを笑いながら追いかける男の子を見たって人……私今までに三人会ってるんですよ。
その人たち、全員私の住んでた街で育ったか、今もそこに住んでるかのどっちかなんです」
加奈さんが体験したのは、もう二十年以上前のことだというが。
彼女が出会ったという”三人目”が体験をしたのは、昨年頭とのことだった。
「繭子ちゃん、なんで死んじゃったんですかね……」
そもそも、あの”犬”は本当に自分の知る繭子ちゃんだったのか。
だとしたら、何故繭子ちゃんは”犬”になってしまったのか。
”犬”を追いかけている、あの白装束の男の子は何なのか。
どうして”犬”は、あんなにも怯えた様子であの子から逃げているのか。
今も”犬”は、男の子から逃げ続けているのか。
――あの日、あの時、あの路地裏で、もしも繭子ちゃんの顔をした犬を抱き上げていたなら、一体自分はどうなっていたのか。
結局、何一つ分からないままなんです。
そう言って加奈さんは眉を顰めた。
この話を聞き終えたちょうどその時に、喫茶店の外を黒い犬を散歩させている男の子が通ったのは、何かの偶然だったのだと信じたい。
人面犬の話かと思ったら、それ以上だった
授業中だったから全く授業に集中できてなかったwそれだけ文才がありゾッとする話やったんやなって
「動物に人間の言葉をアフレコする」手の演出を見るたびにこの話を思い出す呪いにかかってしまった
面白いです!
ありふれ過ぎてて怖さの欠片も感じなくなってしまっていた古典的都市伝説を
見事に怪談としてリブートした作品。
六道の畜生道に結び付けた解釈、想像の余地を残して敢えて消化不良感を残した締め方、文章全体から滲む「人間の子供ではどうしようもない」やるせない無力感。
短い物語の中にしっかりと恐怖のエッセンスが凝縮されてると感じました!
怖すぎる