段ボール
投稿者:神助 (16)
ある天気の良い昼下がり、庭に水まきをしているとお隣の奥さんが目に映った。あ、久しぶりだなぁと思い声をかけた。
奥さんは「ああ!」と私に気づき、こちらに駆け寄って来る。
「ねぇ、良かったらお茶していかない?ちょっと話したい事があるの!」奥さんのお誘いに私は承諾した。
「どうぞどうぞ、上がって!」何度もお邪魔した事のあるお宅、いつもの玄関…の筈なのだが何かが違う…。
何だろう…この空気、というかこの空間の感じは??
いつものお隣さんのお宅の筈なのにこの日はなんとも言えない違和感を覚えた。
そしていつものリビングに通される。いつもの部屋、いつもの家具、いつものカーテン、いつもの奥さん……。
特段変わったところはない。
けれども間違いなく何かがおかしい気がしてならない。
「今、コーヒーでも入れるわね」そう言ってコーヒー淹れてくれた。
オシャレなカップに注がれたコーヒーを眺めながら奥さんはゆっくりと口を開いた。
「この前段ボールの話したでしょ?」
「ああ、あの息子さんの大量の荷物ですよね?例の音の正体はやっぱり虫か何かでしたか??」
謎の違和感もあり“あれ”が虫ではなさそうだと薄々思いつつも聞いてみる私。
「実はね…」私とゴミの日に話をした後、こんな事があったそうだ。
息子さんの仕事が休みの土曜日、いい加減荷物を片付けなさいという事を伝える奥さん。
案の定息子さんは面倒くさそうに、始めは生返事をしていたそうだ。
けれども「カリカリ」と何かがいる様な音がする段ボールがある、虫かネズミがいるかもしれないと言うと、ついに息子さんは重い腰を上げたそうだ。
二人で段ボールの確認に向かう。「これよ、音がしたのはこの段ボール」奥さんがそう言うと息子さんは暫く黙り込んだ。
ジ~っと段ボールを眺めている息子さん。「この段ボール見覚えがないな…」
息子さんの口から意外な言葉が飛び出した。
「そんな筈ないでしょ、あなたと一緒に来たのよこの段ボール。たくさんあるから忘れちゃったんじゃないの?」
「いや、そもそもこの段ボールだけ正方形だし他のより二回りも小さいじゃないか!絶対俺のじゃないよ!」
そう言い張る息子さん。確かにこの段ボールは他のモノとは明らかに見た目が違っていたのだ。
おまけによく分からないシミまでついている。それはカビの様にも見えた。
持ち上げてみるととても軽い、けれども何かが入っている感覚はあった。
兎に角開けてみようという事になり、下に大きなビニール袋を敷き箱を開けてみる事にした。
箱に手を掛ける……「開かない…!」
やはり、箱は何故だか固く閉まっており開かないのだ。
「仕方ない、カッターで段ボールの上部分を切り取ろう」
そう言ってカッターナイフを準備する。
ザクザクとスムーズに箱に刃が入っていく!4辺全て切り終えると遂に中が見えた!
「……!!」
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