夜道で何者かに追いかけられた話
投稿者:with (43)
やはり妖怪だったか。
俺は、もうダメだ走れない、と傷む横腹を抑えて振り返った。
振り返れば、光源を発した得体の知れない何かの生物が大きく影を広げて俺に多い被った。
「うひゃああああ!?」
俺は悲鳴を上げると、『ハッハッハッ』と何かモフモフとした生き物が覆い被さり、温かく湿ったものが頬を舐める。
そして、カランカランと音を立てて地面を滑るように転がった光源に目を向けると、小さめの懐中電灯、つまりLEDライトだった。
「ま、待って…ハァ、ハァ」
更に後方からやってきたのは、中年くらいのおじさんだった。
俺はあんぐりと口を開けたまま、俺に覆い被さった生物を見やる。
視線を下げると、そこには舌を出して『ハッハッハッ』とこっちを見る犬がいた。
犬は狂ったように俺の顔を舐める。
どうやらこの犬は飼い主のおじさんのライトを掠め取った後、口に咥えて全力疾走を始めたらしく、その先に偶々俺が歩いてて、犬が俺を追いかけ、俺が逃げるという構図が出来上がったらしい。
それを俺は光源が地面を這っていると錯覚してしまったのだ。
まさか光源の妖怪の正体がこんな可愛い犬だったとは驚きだ。
情けなくも悲鳴を上げてずっこけた俺は、恥ずかし気に立ち上がって犬の頭を撫でてやった。
モフモフしてて可愛かった。
「す、すみません、うちの犬が…ハァ、ハァ」
飼い主さんは全力疾走してたのか肩で息をしていたが、犬は何の事やらと人懐っこいのか俺の足元をクンクンと嗅いでた。
「いえ、大変すね」
俺はそんな飼い主の苦労を労って、軽く世間話をしてから分かれた。
まあ、かなり驚きはしたが、結果面白かったから良しとしよう。
犬も可愛かったし、撫でられたから悪い事ばかりじゃなかったと、俺は満足気にアパートまで戻った。
さて、後はシャワーを浴びて洗濯だな。
さっきの飼い主にバレなくて良かった。
俺は漏らしてしまったズボンを脱いで風呂場に向かった。
箸休め的な話で嫌いじゃない
夜中の2時に犬の散歩とかコワイですけどね。
漏らしたのはいただけない。
恐怖にかられると、想像力が膨くらむ事を立証できましたね。
通し勤務明けのタクシー運転手やろ。
私も似た体験ありますw ちびる気持ちわかります…