犬憑き
投稿者:ふろん (5)
最近知り合った女の子から聞いた話。
彼女は大学生まで北海道札幌郊外の町で暮らしていた。家族構成は祖母、両親、2つ年上の兄。元々は祖父母二人が暮らしていたのだが、祖父が亡くなっり、祖母だけでは心配だということで両親が同居。しばらくして兄、そして彼女が産まれたとのこと。
幼い頃の彼女はとても成長が遅く、両親、祖母共にとても心配をかけていたらしい。どのくらい成長が遅かったかと言うと、3歳にもなるのに「あ~」とか「う~」とかは言えるが言葉を喋ることが出来ず、立って歩くことも出来ないほどだった。
もちろん、彼女にはその頃の記憶がなく両親から聞いた話だそうだが。
両親が病院で相談し診察してもらったこともあったが、脳には異常はなく人より成長が遅いだけでしょうと言われるのみだった。
そんな日々を過ごしていた彼女だったが、両親は、これはいよいよおかしいということでツテを頼って所謂見える人に相談しに行ったらしい。
そのきっかけとなった出来事が二つ。
立って歩くことができなかった彼女は四つん這いで移動していたのだが、それを見ていた兄がある時何の気なしに近くにあったボールを投げたら、彼女が嬉しそうに四つん這いで走りボール取ってきた。兄も楽しくなってきてくり返しボールを投げては取ってこさせた。その様子を見たお母さんは激怒したそうだが、兄もまだ幼かったので誰も見ていないところではこの遊びに興じるようになった。
そして決定的な二つ目。
彼女の家ではクリスマスはサンタのコスプレをして祝っていた。3歳のクリスマスにサンタクロースになった彼女を記念撮影した時、たまたまTVも写真に映りこんだそうだが、その画面に反射して映っていたのはトナカイになった彼女だった。いや、失礼。正確に言うと、サンタのコスプレをした四つん這いの彼女が映っていたのだが、その彼女に被さって半透明でぼやけた犬も映っていたのだった。
見える人に見てもらった結果、やはりと言うか案の定と言うか、彼女は犬に取り憑かれていた。その後は、お祓いをしてもらい、遅れていた成長もだんだんと人並みになってきたそうだ。
「なかなかおもしろい話だね。お兄ちゃんも小さい子どもなら、まぁ、仕方なしだな。で、何で犬なの?」
興味深い話が聞けたなと思ったぼくは、もう少し突っ込んでみた。
「う~ん、お母さんが言うには、あの家はおじいちゃんが中古で買った家で、前の人は犬と暮らしてたんだけど、その人は家の外で急に亡くなったから犬はずっと家で待ってたからじゃないかって」
「忠犬ハチ公みたいだな」
ぼくは思ったままにそう言った。
「そうだね。でも、見える人にはなんでもっと早く来なかったのって怒られたらしいから、良くは無いものだったんでしょうね。犬にしてみたら捨てられたと思って、怒ったり悲しかったりしたのかもね」
熱心に保護犬活動をする彼女を見て、だから犬なのかとぼくは思った。
みてもらわなかったらずっと、四つん這いだったて事だよね。