知らない友人が知り合いだった

そんな折、Ａが「てかさ、前に見せてくれた打ち上げの写真。他の奴も撮ってたんだろ？参加してた奴にＸが写ってるかどうか確認させてもらえば？」と提案してきた。
つまり、ＡはそもそもＸが俺達に見せた写真が合成ではないかと疑いを持ち始めた。

Ｘが見せてくれた写真が文化祭の打ち上げ写真なら、どうせ参加した奴の何人かは写真を何枚か撮っている筈だ。
その写真の中にＸが居らず、同じ構図で違う人が写り込んでいれば、あれはＸが作り上げた合成写真で決まりとなり、やっぱりＸは俺の知り合いじゃなかった事になる。

俺はすぐに地元の友達の何人かに打ち上げの写真が無いか訊ねてみた。
返事が来たのは夕方以降だったが、おかげで何枚か違う構図だが、打ち上げの写真をラインで送ってもらえた。

それで、一枚一枚確認していくと、Ｘが見せてくれたのと同じ構図の写真を見つけ出した。

そして、Ｘが居た箇所を見ると、そこにはＸとは異なる高校時代のクラスメートの顔があった。

「ほおっ！」って変な声が出たが、これでＸが見せた写真は、この写真を合成したものだと確定した。
Ｘは写真に写るクラスメート一人の顔に自分自身の顔を合成していたのだ。

俺はすぐにＡに通話して「すげえ、マジで合成だったわ！」と興奮混じりに報告した。
でも、Ａが『それが分かっても余計に怖くなるだけだけどなｗ』と別の意味で興奮した声で言われて、ちょっと冷めてきた。

俺はＸに何かしたのか？
見る限りは面識は無い筈だが、どこかで恨みを買ったのだろうか。

そんな事を考えると不安に押し潰されそうになって動悸が激しくなった。

あまりに怖くなってきたからＡに「俺、刺されんの？」って聞いたら、平坦な声色で『刺すつもりなら一緒にカラオケなんていかなくね？』と返ってきた。

確かに言われてみれば、Ｘの目的は不明だが、これまでの行動を思い返してもただ普通に遊んでいるだけで、本人も大体楽しそうに過ごしてた印象だ。
まあ、Ｘが人畜無害な爽やかな印象を抱かせるせいで、俺が忘れていると思い込んでしまったのが発端だが、結局そうなるといよいよＸの目的が分からない。

マジで俺と仲良くなる為に嘘をついたのか？

「俺って男にモテる…？」

『知らんし』

最悪、Ｘが男色ではないかと疑い始めた俺だったが、Ａに冷たくあしらわれた。

まあ、いくら考えても答えが出ない問題もある。
Ａは俺に『直接聞くしかなくね？』と言うが、何と聞き出せばいいのだろうか。
「地元の友達に聞いて回ったけど、やっぱりＸの事誰も知らんし、あの時見せてくれた写真は合成だろ？」って聞けばいいのか？
何か聞いた瞬間、Ｘが豹変して俺が襲われるなんて事はないよな？

そんなネガティブな想像ばかり浮かんで消極的になっていると、Ａは『じゃあラインで聞けば？向こうもバレたらもう近づいてこないんじゃね』と言ってくれたから、Ｘにラインで問い詰める事に決めた。

因みにラインはＸが俺達のグループと話すようになって初めてカラオケに行った時に交換してグループトークを作ったんだが、対面でトークを送るのは初めてだ。

『まあ、頑張れｗ骨は拾ってやるｗ』

Ａの後押しを受けた俺は通話をそのままにしてＸとのトーク画面を開き、『地元の友達に確認したけど、やっぱり俺とＸって知り合いじゃないよね？写真は合成したの？』と送った。
なるべく攻撃的じゃない優しめの口調を意識して打ち込んだ。