墓場のカップル
投稿者:YoyoYoyoY (52)
職場の横には、個人タクシーの協会がありました。
出勤前の運転手さんが、雑談しているところへ遭遇したときの
ことです。
「おもしろい話を聞かせてあげるよ」と愛想の良い運転手が
声を掛けて来ました。
ちょうどお昼休憩中だったので、雑談に加わりました。
「昨日の深夜なんだけどさ、駅前からサラリーマンを乗せて
ある街道を抜け送っていったんだよ。」
運転手は低い声で話し始めました。
「そしたらさ、山の上に墓地があってちょうどそこを通るのよ。
まあ、一人なら薄気味悪いけどお客さんも乗せてるしさ、何となく
横目でチラッと見てみたわけよ」
運転手の仲間も身を乗り出して聞いています。
「ちょっと小雨も降っていたのに墓場にカップルがいるんだよ。
午前3時くらいだよ、こんな時間に肝試しか逢引きかって思うだろ?
でも様子が変なんだよなあ」
私は休憩時間も終わりに近づいていたので、ソワソワしながら
話の先を待ちました。
「何が変ってさ、今12月の真冬だろ?そいつらが来てる服がさ、
男の方はTシャツに短パンだし、女の方はノースリーブのワンピースなんだよ!」
一瞬で鳥肌が立ちました。
「おい、あそこの墓地の道沿いで練炭自殺したカップルいなかったか?」
運転手のひとりがハッとしたように言いました。
「ああ、あれ去年の夏くらいだったよな。クソ暑いのに練炭自殺なんてって
思ったんだよな」
「うわ!あそこ通るの嫌だなあ、でも売上5000円コースなんだよな!」
運転手は空を見上げて溜息をつきました。
タクシー系の話は怖い。
タクシーの運転手さんて、きもがすわっていないとできないなあ。