職場の横には、個人タクシーの協会がありました。
出勤前の運転手さんが、雑談しているところへ遭遇したときの
ことです。
「おもしろい話を聞かせてあげるよ」と愛想の良い運転手が
声を掛けて来ました。
ちょうどお昼休憩中だったので、雑談に加わりました。
「昨日の深夜なんだけどさ、駅前からサラリーマンを乗せて
ある街道を抜け送っていったんだよ。」
運転手は低い声で話し始めました。
「そしたらさ、山の上に墓地があってちょうどそこを通るのよ。
まあ、一人なら薄気味悪いけどお客さんも乗せてるしさ、何となく
横目でチラッと見てみたわけよ」
運転手の仲間も身を乗り出して聞いています。
「ちょっと小雨も降っていたのに墓場にカップルがいるんだよ。
午前3時くらいだよ、こんな時間に肝試しか逢引きかって思うだろ?
でも様子が変なんだよなあ」
私は休憩時間も終わりに近づいていたので、ソワソワしながら
話の先を待ちました。
「何が変ってさ、今12月の真冬だろ?そいつらが来てる服がさ、
男の方はTシャツに短パンだし、女の方はノースリーブのワンピースなんだよ!」
一瞬で鳥肌が立ちました。
「おい、あそこの墓地の道沿いで練炭自殺したカップルいなかったか?」
運転手のひとりがハッとしたように言いました。
「ああ、あれ去年の夏くらいだったよな。クソ暑いのに練炭自殺なんてって
思ったんだよな」
「うわ!あそこ通るの嫌だなあ、でも売上5000円コースなんだよな!」
運転手は空を見上げて溜息をつきました。
タクシー系の話は怖い。
タクシーの運転手さんて、きもがすわっていないとできないなあ。