深夜の墓参り
投稿者:ハムレット (4)
祖母のお墓がどこにあるのかわからない。けれども、せっかく貸してくれたので、
私は足の向くまま、墓地の中を歩いてみることにしました。
ふと、私の先を歩く人がいるようで、提灯の火がゆらゆらと闇の中を
移動していきます。私はその灯りを頼りに歩いていると、
ふっと、その灯りが見えなくなりました。
心細くなった私は、提灯を少し高く掲げて周りの墓石に刻まれた文字に
目をやりました。
「え…。」私は、驚いて息が止まりそうになりました。
祖母の実家の苗字がその墓石には刻まれていて、祖母の戒名も確かに刻まれていたのです。
私は、祖母の墓に手を合わせ、「夜が明けたら、また来るね。」と語りかけて、
お寺の境内へと戻りました。
「おねえさん、お墓の場所はわかったのかい。」と提灯を貸してくれたおばあさんに
聞かれて、「はい、わかりました。私の先に提灯を灯して歩いてた人がいたみたいですね」
お礼がてらに私がそういうと、おばあさんたちはけげんな顔をします。
「あんたにしか、提灯は貸してないよ。こんな時間に墓参りする人なんか、おらんもの。」
「この村では、朝日が昇る前に墓参りする習わしがあるけど、夜中にはせんのよ。」
それを聞いて、私はまた、驚きました。
私を祖母のお墓の前まで導いてくれたあの提灯の灯りは、幻だったのでしょうか。
今になって考えてみると、なにより不思議なのは、真夜中のお墓を一人で歩くことが
全く怖くなかったことです。祖母の魂は、いつでも私を危険なことや恐怖を感じるないように、
いつも守ってくれている…そう思えた、不思議な出来事でした。
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