深夜の墓参り
投稿者:ハムレット (4)
私は、40代後半の主婦です。小さいころ、両親が共働きだったため、同居していた母方の祖母に
とてもよく面倒を見てもらって育ちました。
私が高校生2年時、祖母は亡くなり、祖母のお骨は、
住み慣れた場所ではなく、祖母の生まれ故郷であるS県にある祖母の実家の
お墓に納骨されました。
受験などで忙しく、私は祖母のお墓がどこにあるのか知らないまま
社会人となり、そして結婚して家庭を持ちました。
子供が小学1年生になった時、夏休みに旅行に行こうと思い立ち、
それなら、祖母のお墓参りもしたいと考えて、
祖母の実家にあたる親戚にも連絡して、お墓参りをすることにしました。
お墓の場所がわからないので、現地で親戚と待ち合わせをすることにしましたが、
途中、大渋滞に巻き込まれて、現地に着いたのはすっかり夜中になっていました。
「夜分に案内してもらうのは申し訳ないから、翌朝、改めて伺います。」と
連絡して、一旦、仮眠をとることにしました。」
けれど、大好きだった祖母が生まれ育った村です。
海がすぐそばで、真夜中だけれど、月明かりで思いのほか明るく、少しも怖いとは
感じませんでした。
おばあちゃんに会える気がする…ふと、そんな思いに駆られ、
私は一人、車を降りて、村の中を散策することにしました。
「物騒だから行かない方がいい」と主人は止めましたが、
「5分くらいで戻ってくるよ。ホントにそのあたりをちらっと回ってくるだけだから。」
そういって、私は懐中電灯も持たず、ただ、月明かりだけを頼りに
祖母が生まれた集落の中へと歩き始めます。
すると、いつの間にかお寺の門の前に立っていました。
大きな門の両脇に提灯があり、ほのかに灯りがともっています。
そして、数人のおばあさんが花を束ねたり、お線香を箱に詰めたりして
何か作業をしていました。
「あの、こんばんわ。」と恐る恐る声をかけると、「おや、こんな時間に墓参りかい」と
優しく答えてくれて、「○○家のお墓に参りたいのですが」というと、
「そういわれても、お墓の場所までわからんからねえ。」と困惑された様子。
けれど、「もし、お参りするなら、足元が悪いからこの提灯を持っていきなさい」と
火を灯した提灯を貸してくれました。
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