(うふふふふ、あははははは)
その日、金縛りをかけて来た奴は若い女のようでした。
その笑い声からは、明らかに私をバカにしているようで
ただひたすら笑っているのです。
布団の足元が薄っすらと光っているのが見えました。
(いひひひひひ、ふふふふふ、あはあは~あははは)
この頃は、金縛りも怖いものではなく腹立たしいものになっていたので
小指の先に神経を集中させ、ぐっと内側に曲げました。
シャキーンと一気に金縛りが解けたと同時に、布団を蹴とばし周囲を見回しました。
「何か、すっごくムカつく幽霊だったなあ、何様なんだよって感じ」
珍しく私は憤慨して、柏手を打つと部屋の空気を浄化するため天津祝詞を唱えました。
「高天原に~かむづまります かむろぎかむろみの~・・・」
しばらくすると、寝室は少しずつ清浄な空気を取り戻し落ち着きました。
「邪気をばら撒いて行きやがって!明日は朝一で配達の仕事も入っているから
超忙しいのに、お前と遊んでるヒマはないってーの!」
翌日、職場の同僚に昨夜の話をすると大笑いされました。
「あんた、小柄でちんちくりんだからバカにされたんじゃないの?
よっぽど自分に自信がある幽霊だったんだろうねえ。普通そこまで笑わないよね」
死人に笑われるなんて不愉快極まりない話です。
「笑ってないでさっさと成仏しろ!」
私は持っていた紙ごみを思いっきりゴミ箱に叩きつけました。
こわかった
とんだ災難でしたね。
死人の分際で生意気ですよね。