地中に埋められたのは
投稿者:with (43)
因みに、そいつらが穴を埋めてる最中も雨音とスコップの音に交じって籠った人間の悲鳴みたいな叫びが絶えず聞こえていたんだけど、その中の一人がスコップの先端を穴に向けて突き立てたら静かになった。
俺の体感時間では一時間くらい見てた気がしたが、たぶん、実際には数十分くらいだったと思う。
大人三人は穴を埋め終わると、なんか楽しそうに談笑しながら雨の中で道具を回収し始め、しばらくすると車の方へ戻っていった。
俺は、そいつらが立ち去って五分くらい固まってた。
雨で体が冷えたがそれ以上に怖くて震え上がってた。
もう出ても大丈夫か?あいつらは帰ったか?俺見つかってないよな?
ってずっと考えてた。
念の為、十分以上木の陰でしゃがみ込んでた。
たぶん、あの三人組も帰っただろうと思った俺は、ようやく重圧から解放されて恐る恐る立ち上がり、さっきまであいつらが何かを埋めていたちょっとした広場に出ていく。
さすがに懐中電灯とかないと、こう暗くては何処の地面を掘り返したかなんて見分けがつかなかったが、この辺りにあいつらが何かを埋めていったのは確かだ。
俺はそこに傘を突き立てて、目印にした。
そして、そのまま山林を抜け出して山道に抜けると、道路に沿って俺ん家まで駆け下りた。
因みにこの時点で車が無かったから奴らが完全に立ち去ったと実感できた。
「父さん、父さん!」
それで、家に戻るなり一階の寝室で寝てた親父に飛びついて叩き起こした。
親父は寝起きが悪い方で、俺が肩を揺すると「うっせえ」と寝返りを打って顔を叩かれたが、俺は臆せずに親父を無理矢理起こして変な車が山道を登っていった事を伝えた。
親父はかなり眠たそうで、お袋はその横で「こんな時間になんね」と不機嫌そうに眼を擦っていたが、俺が必死に車のことを話すと、親父はさすがにちょっと目が覚めた様子だった。
因みに、俺が全身びしょ濡れで足元何かは泥まみれだったせいでお袋からきつく叱られた。
山道を登って行った奴らが山林の中で何かブルーシートに包んだ荷物を埋めていた事を親父に話すと、親父は「んー、ほんまか?」と疑心暗鬼な表情で俺を見やった。
俺が「マジやって!」と食い下がると、親父は渋々体を起こして「ほな、ちょっと見てくるか」と欠伸をしながらレインコートを取りに行った。
警察に言わなくていいのかと聞いたんだけど、親父は「ちゃんと俺の目で確かめてからや」と言ってた。
「その車はどこや?」
「たぶん、もう下りたんやと思う」
俺はスコップを片手に、雨具を着こんで親父をその山林まで案内した。
雨はそこまで激しくないし、雨粒も小さいほうだ。
そのおかげで懐中電灯で道路を照らせば、まだ泥を含んだ轍が残ってて、親父も「確かに車が来た痕跡があるの」と言ってた。
道路から山道に入り、更に山林の奥へと足を踏み入れると、やがて俺が突き立てた目印の傘が見える。
俺は「あそこや」と親父に言うと、親父は「マジやったらかなわんな」とため息を漏らしてた。
懐中電灯で地面を照らせば、確かにその一帯は地面を掘り返して埋め立てた跡が残っている。
俺も親父もさすがに緊張してしばらくその痕跡を眺めていたが、親父が「ほんまにここか?」と確認をとってきたので「そこやと思う」と返した。
さすがに親父も怖くなったのかちょっと戸惑っていたが、「よし、掘り返してみるか」と決心したように俺からスコップを取り上げた。
結局何だったんでしょうね