俺が家の中の様子を窺う中、Bは仕事に忠実だった。
仙人は知っている限りの知識を引き出してくれているのか、腕組みをしたまま深く頭を下げる。
時折「うーん」と唸りを加えながら、数十センチと伸びた白黒の顎鬚を摩り、突如閃いた様に顔を上げる。
仙人「村の入口にあった地蔵は見たか?」
B「はい」
地蔵の事を話す仙人は上機嫌そうだったが、Bが知ってると即答すればあからさまに肩を落としていたので見ていて面白かった。
仙人「んだら、ここを少し進んだとこにボロっちい小屋があんだが、そこ行ってみろ」
少し声のトーンを抑えながら体をよじって話に上がる小屋の方角を指差す仙人。
そこに何があるのかは分からないが、この時の仙人の目は一段とギラついていたと思う。
B「そこに何があるんですか?」
仙人「行けばわかる」
そして小屋の所在をもう少し詳しく聞き出せば、仙人の様子からかなり期待できそうな情報だと俺達は顔を見合わせた。
そんな中、Bが触りだけでも何があるのか伺えないか詰め寄るが、今まで饒舌だった仙人は口を固く結んで「行けばわかる」と繰り返すだけだったので、Bは口を尖らせて「ケチ」とぼやいていた。
話のキリが良い所で俺とAは「じゃあ、行ってみるか」とここから立ち去る流れを作る。
俺とAが仙人に「情報のご提供をありがとうございます。そこに行ってみたいと思います」と頭を下げれば、Bは何処で覚えたのか、リュックの中から携帯食料の一部と個人的に持参していた缶ビールを一本取り出して、「おじさん、ありがとう。これ少ないですけどお礼です」と律儀に一言添えて渡しているのを見た。
仙人も途端に笑顔になると、「おお、ええのか?悪いな」と上機嫌で受け取っていたのを見ると、Bの様に偏見なく話せば割と気さくなおじさんだったのかもしれないと自分の視野の狭さを反省した。
仙人の住居を出た俺達は、早速仙人が教えてくれた方角へ進んでみる事にした。
風とそれに揺らされる建付けの悪い家屋が軋む音しかない村だが、空気だけは綺麗なもので、ある意味ではこの廃村も哀愁が感じられて悪くない様にも思えた。
そんな胸中で進んでいれば、村の外れに踏み固められた土道があり、その奥地にボロボロの小屋があった。
恐らく、あそこが仙人が指し示した場所だろうと理解できたが、たまたま森林に囲まれていて陰になっているせいか、鬱屈な気分だった。
何も嵌め込まれていない窓枠から中を覗くと、僅かな日光で中央に重しが乗せられた井戸があるのが分かった。
A「お、開くぞ」
その傍らでAが小屋の引き戸を引けば、引っ掛かりは強いが問題なく開く事が分かり、俺達はぞろぞろと中へお邪魔する事にした。
小屋の中は今はもう使われていない井戸を囲う様に板張りの足場が組まれていて、僅か五段の石段が土の地面へ続いている。
そして、そのど真ん中に石蓋がされた井戸があるのだ。
見た目だけで言えば、元々井戸があった場所に、井戸を囲う様に小屋を建てたといった感じだろうか。
B「貞子いるんじゃね」
Bが冗談を言って笑わせようとするが、本当に貞子が居てもおかしくない雰囲気だったので、俺は苦笑いした。
A「開けてみるか?」
俺「これ俺達でもち上げれるか?」
すげえ
めっちゃ読み応えありました
こういうのもっと読みたい
これ最高
描写がすごい
これほん怖とかの実写で見てみたいな
想像で吐き気がやばかった。怖かった。
漢字で書いた方が読みやすい言葉と、ひらがなで書いた方が読みやすい言葉がある。って文学者が言ってた。
本当に理解しているエンジニアは説明の時に専門用語を使わない。それと似ている
読み応えあるしきちんと怖い
大学二年生で平成後期生まれって書いてるから飛び級でもしたのか?と思ったけど後半って書きたかったのかな?
俺も気になった
2023年1月に投稿で夏休みの話ってことは、どんなに若くても2022年夏に大学二年生=2003年(平成15年)生
平成後期生まれとは言わないわな
細かいかもだけど、こういうとこで1回気になると一気に没入感無くなるからもうちょい設定練っといてほしい
↑
わかる。設定に引っかかると萎えるよな
俺は「排他的であればあるほど研究意欲が沸き立つ」で「オカルト好き」なのに完全に他人任せで調査に関わらない先輩が気になった
翌日迎えに来れるなら別の重要な調査と被ったとかじゃないだろうし
語り手達に状況を再確認させる人物がストーリー的に必要だったのは分かるけどちょっと萎える