まるでゴキブリが出た時の様に、先輩は絶叫しながら何度か飛び跳ねて俺達の許へ戻ってきた。
そして、先輩越しに寝袋を見れば、そこには薄汚れてはいるものの人の形を残した白骨体が横たわっていた。
ただ、先輩と違って俺達三人は悲鳴を上げると言うよりも、クエスチョンが頭の中に広がり呆然とその光景を見つめていた。
昨日ここを訪れた際に寝袋は無かった筈だ。
という事は、これは仙人が仕掛けたのだろうかという疑問が湧いて出たが、肝心の仙人は何処に行ったのだろうかと家の中を見回す。
先輩の悲鳴を聞きつけて姿を現わしてもいいものだが、結局仙人が出てくる事は無かった。
寝袋に横たわった骨を観察していた先輩が「マジでびびった」と胸に手を当てながら動悸が治まるのを待っている。
その横で、Bが「仙人いねえな」と別の部屋を覗き込んでいたが、Aは「止めとけ、見つかったらマジで何されるかわかんねえぞ」とBの裾を引っ張っていた。
ここで仙人の帰りを待っていてもいいのだが、無断で家に上がり込んだと知った途端に何をされるかわかったものじゃない。
俺は「とりあえず出ません?」と進言するが、先輩は「ちょっと待って」と言いつつも、何故か寝袋の生地を指先でつまみ、残りの布を剥ぐ。
骨全体を確認したかったのかは分からないが、その行動によって白骨体の全身が露となる。
だが、俺はその白骨体の右膝下から先が義足だと気付き、ハッとした。
反射的にAとBを呼び寄せると、仙人の身体的特徴について再度三人の記憶を結びつける。
白と黒が入り混じった顎鬚を携えた初老で恰幅の良いおっさん。
そして、何故かずっと片足を引き摺っていた事を思い出す。
その片足はまさしく白骨体と同じ右足だった。
加えて、目測だが全長も仙人に近い様に思える。
これが偶然なのか分からない。
ただ、俺達の背筋にこれまで感じた事の無い悪寒が迸ると、急激に気温が下がった様に思えた。
俺達が昨日顔を合わせて話をした仙人は本当に人間だったのだろうか。
どうして仙人と同じ身体的特徴の白骨体が、仙人が根城にしていた居間に寝かされているのか。
この白骨体が仙人のものと断定した訳ではないが、仮に白骨体が別人だとしても、仙人はこんな所に骨を放置して何処に行ったと言うのだろうか。
まじまじと白骨体を見ていれば、今にも仙人が「おい」と語りかけてきそうで気が気じゃなかったが、先輩に「出るか」と言われたのでそそくさと退散する事にした。
仙人の居住を出て、村の中央をトボトボと歩いていると、不意にBが「仙人の鍋捨てたじゃん?そこ確かめてみねえか?」と切り出したので、昨晩宿泊した民家の裏まで足を運ぶ。
そこの草むらに土を掘り返して埋めた痕跡が日光に照らされてよく分かるが、正直期待はしていなかった。
近くの納屋に立てかけられていた赤錆まみれのスコップを手に取って土を掘り返すが、地中を掘れども鍋の具材が出てくる事は無かった。
B「は?どうなってんだよ」
Bが悪態づいて必死に掘り返しているが、何処を掘り返してもたまに石ころが出てくるばかりで、俺とBが口に含んだ塩辛い肉の残骸が見つからない。
では、俺達は何を食べさせられたのだろうか。
最早何がどうなっているのか分からず、急激に吐き気に襲われた俺とBは、茂みにへこたれてえずく。
と言っても胃液しか出てこなかったが。


























すげえ
めっちゃ読み応えありました
こういうのもっと読みたい
これ最高
描写がすごい
これほん怖とかの実写で見てみたいな
想像で吐き気がやばかった。怖かった。
漢字で書いた方が読みやすい言葉と、ひらがなで書いた方が読みやすい言葉がある。って文学者が言ってた。
本当に理解しているエンジニアは説明の時に専門用語を使わない。それと似ている
読み応えあるしきちんと怖い
大学二年生で平成後期生まれって書いてるから飛び級でもしたのか?と思ったけど後半って書きたかったのかな?
俺も気になった
2023年1月に投稿で夏休みの話ってことは、どんなに若くても2022年夏に大学二年生=2003年(平成15年)生
平成後期生まれとは言わないわな
細かいかもだけど、こういうとこで1回気になると一気に没入感無くなるからもうちょい設定練っといてほしい
↑
わかる。設定に引っかかると萎えるよな
俺は「排他的であればあるほど研究意欲が沸き立つ」で「オカルト好き」なのに完全に他人任せで調査に関わらない先輩が気になった
翌日迎えに来れるなら別の重要な調査と被ったとかじゃないだろうし
語り手達に状況を再確認させる人物がストーリー的に必要だったのは分かるけどちょっと萎える
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おもしろかった。