スープや野菜が美味かっただけに、逆にどうやって肉だけこんなに不味く仕上げられるんだと鍋を凝視するが、そもそもこの肉は何の肉なんだという素朴な疑問が頭を過った。
まさかとは思うが、この肉の素は井戸に投げ捨てられていた骨の持ち主なのではないかと疑った。
万が一、井戸の骨とこの肉が同一の個体だとしても、この肉が何の動物なのか分からなければ何の意味もないのだが、俺の中ではどうしてもこの肉が「人肉」にしか見えなくなってきていた。
B「なあ、やっぱりこの痕……」
俺が井戸の骨の事を想起させている横で、Bは息が詰まった様な面持ちで例の手痕が刻まれた腕を震えながら摩る。
ランプに照らされても分かるその痕は、まさしく人間と同じ五本指が刻まれていた。
俺「いや、猿とかの可能性もあるだろ」
Bが何かを言う前に俺はそんな言葉でお茶を濁したが、少なくとも猿が井戸の中にいる訳がないと思っていた。
それはBも重々承知している筈だが、俺は意気消沈となったBとその手痕から目を背けた。
仙人と言い、あの井戸と言い、この村は何かおかしい。
最悪、Aの体調が戻れば明日にでも下山しようかとさえも考えた。
だが、横たわるAを一瞥しても相変わらず悪夢に魘されているのか、すごい寝汗をかいていたので嫌な感じがだんだんと加速していくのを感じた。
まさかあの不衛生な井戸で病原菌でも貰ったのかと一瞬考えを巡らせたが、流石にこんな即効性のものは無いだろうと自分を落ち着かせる。
Aの体調の急激な変化はウィルス性を疑う様な発症具合だった。
一先ず、鍋にはそれ以上手を付ける事なく家の裏の草むらにでも捨てておく事にした。
念のため、土を掘り返して雑に埋め立てたが、今にも何処かで監視している仙人に見つかってしまうのではと思えば動悸が激しくなった。
そして、その夜、いつの間にか眠りについていた俺は最悪の夢を見る事になる。
夢の中の俺は何故か例の小屋の中へ入っていく。
半開きの石蓋の前に佇み、井戸の中を覗き込めば、常闇に真っ白い目玉が二つ浮かび上がる。
目玉と目が合うと、井戸の中から触手の様に細長い腕が何本も飛び出てきて、俺の体中を掴んで引き摺りこもうとする。
どうしてか無音の世界で叫ぶことも出来ずに苦しみもがき、俺は必死に抵抗するが、ズリズリと井戸の中へと頭から引っ張られていくのだ。
そして、常闇の中で更に黒い無数の顔が俺を取り囲むように睨んでくる。
怨嗟を乗せた様な慟哭を上げているのは分かるのだが、生憎と音が聞こえない。
訴えている内容を解読する事は出来なかったが、途端に腕に痛みが走ったので見て見れば、顔の一つが俺の腕に噛みついていた。
その光景に絶句していれば、続け様に全方方位から顔が押し寄せてきて、俺の血肉を貪り始める。
痛い。
とにかく痛い。
夢だという事ははっきり認識しているのに、痛みだけは本物に思えて頭がどうにかなりそうだった。
そして、体感で何時間か耐えていれば、我に返った様にハッと目が覚めた。
何やら温かい感触を口許に覚えると、自分がBの脹脛に噛みついている事に気付き、「ええええ!?」と錯乱しながらBの足を放り投げる。






















すげえ
めっちゃ読み応えありました
こういうのもっと読みたい
これ最高
描写がすごい
これほん怖とかの実写で見てみたいな
想像で吐き気がやばかった。怖かった。
漢字で書いた方が読みやすい言葉と、ひらがなで書いた方が読みやすい言葉がある。って文学者が言ってた。
本当に理解しているエンジニアは説明の時に専門用語を使わない。それと似ている
読み応えあるしきちんと怖い
大学二年生で平成後期生まれって書いてるから飛び級でもしたのか?と思ったけど後半って書きたかったのかな?
俺も気になった
2023年1月に投稿で夏休みの話ってことは、どんなに若くても2022年夏に大学二年生=2003年(平成15年)生
平成後期生まれとは言わないわな
細かいかもだけど、こういうとこで1回気になると一気に没入感無くなるからもうちょい設定練っといてほしい
↑
わかる。設定に引っかかると萎えるよな
俺は「排他的であればあるほど研究意欲が沸き立つ」で「オカルト好き」なのに完全に他人任せで調査に関わらない先輩が気になった
翌日迎えに来れるなら別の重要な調査と被ったとかじゃないだろうし
語り手達に状況を再確認させる人物がストーリー的に必要だったのは分かるけどちょっと萎える
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おもしろかった。