「あめたべる?」
投稿者:すだれ (27)
「あの時の出来事自体がそもそも夢だったのかもしれないけど、今でも何もわからないままなんだよな」
「…君は幼少からずっとこの町に住んでいるんだよな?」
「ん?ああ、引っ越しもしてないね。この居酒屋来る前にホラ、左手に入る道あっただろ?あの道真っすぐ住宅地の方に行くとその公園があるんだよ」
「そこで君は男の子からもらったんだな?飴を」
「そうだよ。っつっても、アレを飴って良いっていいのかはわからんけどな」
それで、
「それがその真っ青な顔色と関係あるの?」
友人はグラスを置き、向かいの席に座る此方の顔を覗き込んだ。
「何に気づいた?」
「…何も」
「ンなわけあるか。話せよ、その見解聞くために話したようなモンだ」
ぐぅ、と息が漏れたが目前の友人は逃がす気はないのだろう。話す前に食い縛った口の中にありもしない存在を感じて一層胃の辺りが軋んだ。
「君が出会ったという…紫の飴を配る者の話を聞くのは…これで2度目だ」
「…ん?同じ出身のヤツ?名前何ていう?」
「いや、知り合いではないはずだ…1度目に聞いた際はここではない、県外の田舎の公園だったし、」
1度目の話を聞かせてくれたのは此方の祖父だ。
「…は、」
「場所も年代すらも違う。しかし飴を配るという行動は共通している。少年の頃の祖父も、食べる前に割って中の物体を目撃したそうだ」
「その飴食べたらどうなるとかは、」
「わかっていない。祖父の通っていた学校や近所、同世代の子供たちの間では比較的有名な存在だったようだ。その男の子が一体何者なのか、真の目的は飴を食べさせることだろうが、食べたらどうなってしまうのか…詳しくは、わかっていない。ただ、言えるとすれば、」
その男の子は今もどこかで飴を配っているかもしれないな。
子供が集まる公園に現れては、紙に包まれた飴を渡しているかもしれない。
友人は乗り出していた身体を背もたれまで戻し、手元のグラスを眺めた。
「幽霊というよりは妖怪や怪異に近いかもな」
「そうか。…なあ、お前のじいちゃんさ、」
「ん?」
「男の子の顔見たんじゃね?」
(「顔をあげたんだ。飴落としちまってわりぃなって言おうとしてな」)
「…さて、何と言っていたかな」
「うわそれ『見た』って言ってるようなモンじゃん」
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