より子ちゃん (クリスマス特装バージョン)
投稿者:kana (210)
「そういえば、あの時ってなんだか幸せだったなぁ…世界がすべて美しくて…より子ちゃん…元気かな…」ボクは急に会いたくなって、久しぶりに自転車で教会まで行くことにした。まだそこにいてくれるんだろうか?
雲行きが怪しい。なんとなくもうすぐ雨が降りそうなそんな天気だ。急ごう。
自転車で坂道を駆けおりた先に教会が見えてきた。あの目立つガーゴイルはなくなっていた。久しぶりに教会の門をくぐってみる。自転車を押しながらしばらくキョロキョロ探してみる。
「より子ちゃん…より子ちゃんいる?」
小さな声で呼びかけてみる。
いつも一緒にいた木陰に立ち寄り、少し待ってみた。
しばらくするとより子ちゃんが白い光と共にスーッと静かに横に現れた。
そしてこの時、あることに気付いてしまった。
初めて出会ってから数年がたち、自分はもういっぱしの中学生で背も伸びたのに、
より子ちゃんは昔のままの小さな少女のままなのだ。
その事に今更ながら気が付いて、自分の中に強い違和感を感じてしまった。
いや、その可能性は薄々気付いていたのかもしれない。
だが、信じたくない気持ちがそうさせていたのか…
ボクは頼子ちゃんに問いかけた。
「もしかしてより子ちゃんって…幽霊…なの…?」
その瞬間、より子ちゃんはうつむいて、少し悲しい顔になった。青白い顔がさらに青白くなって行くような…そして今度は悲しそうな目でボクを見ながら、だんだんうっすらと消えていった。
ボクは驚き、唖然としながらも、言ってはいけないことを言ってしまったんだと激しく後悔した。雨が降る中、ボクは自転車を走らせ家路についた。顔を濡らしているのが雨なのか、涙なのかわからなくなっていた。
それからというもの、もう二度とより子ちゃんに会うことはなかった。
今でも思い出す。消えゆくより子ちゃんの潤んだブラウンの瞳を…。
・・・・・・
「ねぇパパ…どうしたの?」
息子の声にハッとして我に返る。昔の思い出に浸ってしまった。
そうだ、今は息子とお友達でクリスマスパーティの最中だった…。
「あぁ、ごめんごめん、そうだ、今日はみんなにプレゼントがあるぞ~」と包を取り出そうとした時、息子がこう言って手のひらを見せてくれた。
「あのね、より子ちゃんって子がね、プレゼントだって、これくれたよ!」
「えっ…?」ボクは驚いて息子の手のひらを覗き込んだ。
そこには、あの懐かしい、小さなローズクウォーツが輝いていた。
「あぁ…そうか。大人になったボクにはもう見えなかったけど、ずっとそばにいてくれたんだ…」
ありがとう、より子ちゃん。メリークリスマス!
kamaです。
一部誤字脱字などを修正いたしました。また最初に6ページ目まで少し飛び出していたのですが、改行位置を改善したり余分な行を減らしたりして5ページに減量出来ました。
また、もともとの作品では小学生時代は「より子ちゃん」中学生~大人のセリフでは「頼子ちゃん」としていたものを「より子ちゃん」に統一しました。もしかしてどこかにまだ残骸が残っているかもしれませんので、万が一見つけた方はご報告よろしくお願いします。
素敵なお話でした。
↑kamaです。ありがとうございます。
この話はぜんぜん怖くないので、「怖いに投票する」ボタンが押しにくいですよねぇ。
よかったらかまわず押して行ってください。
先生、このシリーズ?も気が向いたら来年もたまに投稿するみたいな感じですか?
↑kamaです。先生ってボクのことですか?初めて言われたからこっぱずかしいです。
このお話は来年早々、少し動きがありそうです。
あと、実はこのお話には企画段階でいろいろなエンドを用意する案もありました。
まぁでも、割とファンの方もいますので、今のところはファンの方の夢を壊さないようにしたいと思っています。
解説ってあるんですか?
↑kamaです。
年初早々に動き・・・と書いたのですが、長くなってきていますので、
少し時間がかかっています。
あと、今回はクリスマスバージョンとして出したのですが、
クリスマスじゃない普通の話も出しておくべきかと思い、そちらも現在準備中です。
解説はまた回答編を用意しようと思います。