先に行っておいて

朝からずっとおかしなことばかりだったし、「先に行っておいて」という言葉が脳内で何度も繰り返されました。

後に感じたことですが、私はこの日を何度か繰り返しているに違いないと思うのです。

そう思ったらしっくりくることがたくさんありました。

その日のすべてに既視感があり、記憶にはないのに、見たようなしたような気がすることがたくさんありました。

それからもう一つ、おかしなことがありました。

2泊3日で出張に行くと言っていた夫が急遽この日の夕方に家に帰ってきたのです。

主張先で今日も泊まる予定のはずなのに帰ってきました。

しかも会社に連絡せずに、勝手に帰ってきたらしいのです。

そして帰ってくるなり、涙をだらだらと流しながら家にいた私と息子を抱きしめました。

「何で泣いてるの？」と聞いても、夫は分からないというのです。

今日のトラックの話をしたら夫はすごく心配してくれました。

でもお互いになぜかトラックの事故に強い既視感があったのです。

これが初めての気がしませんでした。

とても不思議なことですが、私はあの日運命を変えたのではないかと勝手に思っています。

あの日夢で見た気がする「先に行っておいて」という言葉に反応していなければ、きっと息子は助けられなかったでしょう。

あのとき息子の腕を引っ張って引き止めなかったら、息子はあのトラックの荷物に押しつぶされて死んでいたとしてもおかしくないのです。

今、一年一年成長していく息子を見て、涙が出るほど嬉しくなります。

もしなんらかのチャンスによって息子の命が助かったとするなら、そのチャンスに感謝したいです。