先に行っておいて
投稿者:ぴ (414)
こうして、息子を幼稚園から引き取り、家にまで帰ってきたら、息子が「散歩に行きたい」と言い出したのです。
この時間普段の私なら忙しくて散歩などにはいけません。
だけどその日は丁度夫もいないので、そんなに慌てて夕食を作る必要もないし、ちょっと散歩に行くくらいいいかと思いました。
あれだけ寝てもまだ眠いというのもあって、私はその眠気を覚ますつもりも兼ねて、息子と一緒に近くの公園に散歩に行くことにしたのです。
家からまっすぐ歩道を歩いていって、右に曲がると公園が見えてきます。
本当にすぐの距離で、危険などないはずでした。
だけど、私はその日明らかに緊張していたのです。
なぜか胸がどきどきしていたし、体が強張って、公園に行こうとするのを嫌がっているように思えました。
特に何もないのに、ずっと恐怖の気持ちが胸をざわつかせていたのです。
私はそんな自分がすごくおかしいと思いました。
息子の手を繋いで、曲がり角にやってきたのです。
その前に私は靴紐が解けてしまって、その場で靴紐を結び直しました。
そうしていたら息子が公園に行きたくてたまらなかったのか、ぐいぐい私を引っ張って「早く」と急かすのです。
だから私はつい何も考えずに、「もうすぐそこだし、先に行っておいて」と言いました。
そう言った瞬間に体がぶるっと震えたのです。
私は気づかぬ内にあの言葉を発していました。
そしてそう言った途端、体が嘘みたいに勝手に機敏に動きました。
私が言うがまま先に道を曲がっていこうとする息子の腕をとっさに掴んで引き留めたのでした。
その数秒後だったと思います。
曲がり角の向こうで、今までに聞いたことがないような轟音が鳴り響きました。
ドォンというすごい音でした。
私はドキドキする胸を押さえて自分を落ち着かせなから、おそるおそる曲がり角を曲がりました。
そしてその先の現状に驚いたのです。
大型のトラックから積み荷が歩道に転がっていました。
重そうな荷物ばかりで、おそらくあのまま息子を行かせていれば、間違いなく荷物の下敷きになっていたでしょう。
本当に間一髪だったと思います。
それを見たときに血の気が引いたし、同時に深い安堵をしたのです。
そして私は「やっと助けられたぁ」と無意識に口にし、息子を抱きしめていました。
自分が言っていることのわけのわからなさが怖かったです。
私にとってこの日は運命を決める日だった気がします。
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