お迎えフロア
投稿者:ねこじろう (149)
「あんた、知らんのか?
この病棟はな4階建てでな、4階には4部屋あってな、この特別な病室に入れられた者は皆身寄りが無くてお迎えの近づいた者なんだよ」
そう言うと男は天井を見上げ、大きくため息をついた。
すると
「おはようございまーす!」
突然若い女性の元気の良い声がする。
病室の入口に、かなり横幅のある看護師がにこやかに微笑みながら立っている。
看護師はノシノシと歩き俺の枕辺に来ると、
「太田さん、昨日のオペ頑張りましたねえ。体調はどうですか?」と言いながら俺の額に手を当てる。
「今のところは大丈夫だけど」
と言うと看護師はノートに必要事項をてきぱき記載しながら、
「それは良かった。
でももしかしたら後からまた痛みがあるかもしれませんから、その時は遠慮なくナースコールしてくださいね」と言うと俺の目を見て優しく微笑んだ。
それから血圧を計りその場を立ち去ろうとした時、
「ここ【お迎えフロア】って呼ばれてるの?」と尋ねてみる。
俺の咄嗟の質問に看護師は一瞬顔を曇らせると、
「山中さんね。
また要らないこと言ったでしょ?」
と言って前のベッドの男の方を睨む。
山中という男は聞いているのかいないのか、天井を向いたまま目を閉じていた。
俺が不安げにしてると看護師は、
「太田さん、変な噂とか気にしなくていいですからね。太田さんはきっと治るから」と言うと、さっさと前の患者の方に歩いて行った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
朝の検診が終わり一眠りすると、目覚めた時はもう夕刻になろうとしていた。
右手にある窓から見えるワインカラーの鰯空をぼんやり見ていると、
「ああ、わし、まだ死にとうないわ、、、」
突然前のベッドの山中さんが恨めしげに一言呟くと、しゃべりだした。
「兄ちゃん、わしな今年で40になるんやけど若い頃から酒ばっかり飲んどってな、終いにとうとう肝臓をやってもうたんや。去年の末家で倒れて、ここに運ばれてオペされたんやけど、その時はもうあちこち転移しとってな」
「手術は今まで3回やったかな。
この間のなんか頭にがん細胞が来とるというんで、頭にメスを入れられてな大変やったわ。
お陰で最近は、夜になると辺りに変な輩がウジャウジャ現れるのが見えるようになってしもうた。
医者には余命3ヶ月と言われとるんやけどな。でも多分やけど、もうそろそろやと思う」
人肉系ね・・・
臓器売買かと思ったらそっちかーい!!怖!
死体の肉が患者に配られ、もしその患者が死ぬとまた肉になって配られる。
最悪の循環…