金魚の夢
投稿者:ぴ (414)
多分あれは小学生時代のことだったと思います。
夜店で友達と一緒にやった金魚すくいにはまったのがきっかけで、夜店に行くたびにどんどんおうちに金魚が増えていき、気づけばたくさんの金魚を飼うようになりました。
大きな金魚から小さな金魚、赤やら黒やら白黒やらぶち模様があるものなどいろんな金魚がいました。
面倒くさがりな親はきっと最初すごく嫌がったと思いますが、子供だった私があまりに金魚に夢中になっているので、諦めて飼ってくれました。
うちは残念ながらよくある中流家庭で、室内で上等な大きな水槽で金魚を飼うような生活はできませんでした。
なので金魚は外で飼いました。
母が家庭菜園で使っていた大きな青いバケツがあり、それに水を入れて庭のふちで金魚を飼い始めたのです。
えさをあげると寄ってくる姿が可愛くて可愛くて、とても可愛がって大事に育てていました。
私が覗くとこっちに泳いできてくれるような気もして愛らしくて、学校から帰る度に金魚たちを見ていました。
しかしあるとき、学校から家に帰って真っ先に金魚のバケツを見に行くと、金魚が一匹バケツから飛びだして死んでいたのです。
その姿を見て、思わず声が出ました。
最初見たときはあまりのショッキングな光景に言葉もなかったです。
バケツから庭のほうに飛び出して死んでおり、それにアリがいっぱいたかっているのです。
夢に出てきそうなその様子をみて、泣きそうになりました。
母に言うと一緒にお墓を作ってくれました。
本当に可哀そうで、私は手を合わせて天国に行けるように祈りました。
ただこの事件はそれだけでは終わらなかったのです。
金魚が一匹外に飛び出た事件の翌日、家に帰るとまた金魚が一匹外に飛び出て死んでいました。
また同じことがあって、さすがに落ち込みました。
なぜこんなに頻発して同じ事故が起こるのかと私はかなり心が沈みました。
その日は金魚のことばかり考えていたからか、金魚の夢を見たのです。
その夢の中では、私は金魚自身でした。
水の中で悠々と泳ぐ金魚は、いつも自由が欲しいと思っていたのです。
狭いバケツの中でいるよりも、もっと違う外の世界を見てみたいとずっと思っていました。
そんな中二匹の金魚が勇気をもって順番に外に飛び出していき、それを見守っていた金魚(自分)は思ったのです。
「私も自由になりたい」と、そう金魚はバケツの外に出たがっていました。
そしてその日、金魚は外に行こうと心を決めました。
二匹みたいにもっと広い場所に出て、自由を得るためでした。
そして思いっきり体をしならせて、勢いをつけて外に飛び出したのです。
しかし夢と現実は程遠く、飛び出た先は自由な楽園などではなく、水のない地獄の世界でした。
金魚の事を思うばかりに、金魚の夢を見たのだと思いますね。