俺たちはカウンターの端に座った。
すると白衣姿の小太りの若い女性が「いらっしゃいませ」とニッコリ微笑みながら、おしぼりを手渡す。
「あれ?ちーちゃん、その指輪?」
今泉がその若い店員の左手に光る銀色の指輪を目ざとく見つけ、言う。
指輪には可愛いピンクのハートの細工が施してあった。
ちーちゃんと呼ばれるその女性は顔を赤くして、すぐに手を後ろに隠した。
「なーんだ、ちーちゃん良い人いるんだあ。ざーんねん!ま、良いか。
でも、ちーちゃん辞めないでね。
ここはバイトがよく辞めるみたいだからさあ。
ねぇ、大将!」
カウンターの向こう側に立つ赤いパンダナのでっぷりとした体躯の「大将」が、苦笑いしている。
太い眉毛にドングリ目が憎めない印象だ。
「じゃあ、とりあえず生ビール二つ!
それと大将さっそくだけど、例のやつ二つね」
今泉の意味深な言葉に大将は上目遣いでニヤリと微笑むと、背後のカーテンを開けて奥の厨房に消えた。
出てきた生ビールを飲み干す前に「例のやつ」は白い皿に乗せられ、俺たちの前に置かれた。
見た目は普通の牛の赤身のようにしている。
これをカウンターに置かれた小型の焼き器で一枚一枚、焼くようだ。
皿に盛られた血まみれの肉たちを次々鉄網の上に乗せていく今泉を横目に、俺も同じように焼いていく。
ジュウ、ジュウという心地よい音と食欲をそそる香ばしい匂いが、鼓膜と鼻腔を心地よく刺激する。
ある程度焼けたものを専用のタレに付け、口内に放り込んだ。
途端に口内に、強烈な甘みと旨味がパァッと広がった。
「何だ、これは!」
思わず声が出てしまった。
それを聞いた今泉がこちらを向き、勝ち誇ったように微笑む。
一皿が無くなるのに5分かかっただろうか。
俺はすぐに二皿めを注文すると同時に、大将に尋ねた。
「大将、これ一体牛のどの部分なの?」
大将は「まあ、それは企業秘密ということで」と照れ臭そうに頭を掻くと、逃げるように厨房に消えた。
それを食べている間、俺と今泉が会話をすることはほとんどなかった。


























大体途中から人肉なのかとわかったけどわかったけども…怖かった!笑笑
大将、タヒ刑すね。