最安値トランクルーム
投稿者:件の首 (54)
トランクルームが出始めの頃の話。
当時、DIYにハマっていた私は、作ったものを収納するために、近くに新しく出来たトランクルームを借りる事にした。
そこは、荷物を運ぶコンテナを2段積みにした構造で、コンテナ自体はどこかの中古品を流用したもので、鍵はバーを扉に通して南京錠をかけるというアナログなものだった。
それだけなら良いのだが階段は可動式のものが1つだけ。もし別の誰かが使っていると、終わるまで待たなければならないという、安さでは補えない不便さがあった。
その日、私はまた、ものを入れに来た。
だが丁度同じタイミングで、階段は隣の人が使っていた。
向こうの作業がどれぐらいで終わるのか、聞いてみようと思い、階段を上がってみた。
薄暗いコンテナ内はにはいくつか段ボール箱が置かれているだけで、誰もいない。
「どなたか、いませんか?」
声をかけたが、返事はない。
閉め忘れて帰ったのだろう。そう考えコンテナを閉め、バーだけをかけておいた。
数日後、私はまたトランクルームにやって来た。
すると。
周囲に異臭が漂っていた。異様にハエが多い。
急いで自分のコンテナを開けてみたが、発生源そのものではなさそうだった。
何となく。
察する事があった。
私は隣のコンテナを開けた。
南京錠はかかっていなかった。
扉を開けた瞬間、無数のハエが溢れ出てきた。
段ボールの陰から、僅かに黒い液体のようなものが見えていた。
警察の分析によると、隣のコンテナの中にあったのは、近所の小学生の死体だった。
死因は絞殺。
犯人は死体の処理が出来ず、トランクルームのコンテナに放置した。
入り口から段ボールの影になって絶妙に見えない位置だった。
利用者が少なく、10日区切りでしか見回りをしない雑なトランクルームのため、丸9日かけて完全に腐敗するまで誰も気付く事がなかった。
――つまり、私が戸を閉めた事が事件の原因という訳ではなかった。
自分が人を殺してしまったのではないかと心配していたので、心底ホッとした。
本当に良かった。
そんな事なら。
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