てるてる坊主になった【とおるくん】
投稿者:ねこじろう (147)
僕は苦笑しながら会社に出掛けました。
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その日僕は仕事に手間取ったおかげで、マンションに帰り着いたのは夜9時を過ぎてました。
シャワーを浴び1缶ビールを飲みます。
コンビニで買った弁当を食べ、しばらくニュースとかを観てから、早々に電気を消して布団に入りました。
5階の部屋なので、とても静かです
疲れていたのでしょう。
微かに聞こえてくる雨の音を聞きながら程なく眠りに落ちました。
どれくらい時間が経ったころでしょうか。
ドン!ドン!ドン!
何かを乱暴に叩く音で目が覚まされました。
枕元の時計を見ると、まだ午前2時10分です。
立ち上がり電気を点けます。
どうやら誰かが玄関のドアを叩いているようです。
―誰だよこんな時間に。
イタズラか?
舌打ちしながら玄関先まで行き、覗き穴から外を見た瞬間ゾッとしました。
そこには無表情のとおるくんが立っています。
薄暗い廊下で、
真っ白な大きな布に穴を空けてそこから頭を出し首を右側に曲げ、まるでてるてる坊主のような恰好で必死にドアを叩いているのです
朝僕が言った言葉を呪文のように繰り返しながら。
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
……
疲れとストレスもあったせいか僕はドアを乱暴に開けると、つい、止めろー!!と怒鳴ってしまいました。
とおるくんは一瞬きょとんとした顔をするとゆっくり踵を返し、またさっきの言葉を小さく呟きながら自分の部屋に向かって歩いていきます。
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
……
引っ越した方が良いです。とおるくんが成仏してくれたらいいですね。
とおるくんにそんな事を言わなきゃよかったのかもしれません。