てるてる坊主になった【とおるくん】
投稿者:ねこじろう (147)
それからは、ドアを叩く音は止みました。
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翌朝いつも通り仕事の支度をして玄関のドアを開けると、とおるくんの部屋のドア前に1人の警察官が立っているのが見えました。
どうしたんだろうとしばらく様子を見ていると、ドアが開き救急隊員が現れ誰かが担架に乗せられて出てきました。
年老いた母親が泣きながら後を追います。
―とおるくん、何かあったのかな
僕の心は嫌な予感に包まれました
その日の夜遅くに聞き込みで訪問した警察官から、僕はとおるくんが亡くなったことを聞きました。
早朝、自宅のベランダから首を吊っていたそうで、エントランスからマンションを何気なく見上げて発見した新聞配達員によると、それはまるでベランダから吊り下げられたてるてる坊主みたいだったということです。
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このことがあってからというもの
たまに激しい雨が降った日には、夜中になるとマンションのドアを乱暴に叩く音がするのです。
ドン!ドン!ドン!
……
玄関の覗き穴を覗いても見えるのは薄暗い廊下だけで、
そこには誰もいません。
ただどこからでしょうか、
微かに聞き覚えのある声が聞こえてくるのです。
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
「あ~あ、とおるくん、てるてる坊主にでもなって雨を止めてくれないかな」
……
【了】
引っ越した方が良いです。とおるくんが成仏してくれたらいいですね。
とおるくんにそんな事を言わなきゃよかったのかもしれません。