廃棄物処理会社社員の手記
投稿者:件の首 (54)
僕は民間の廃棄物処理会社に勤務している。
勤続3年目になった時、社長室に呼び出された。
「――やあ、忙しいところすまないね」
社長はいつも通りにこにこしていた。
「そろそろ、夜の業務もお願いしたのだが、どうだね」
「夜勤なんかあったんですか?」
「重要な企業秘密に関わる廃棄物の処理でね、人を選ぶんだ。残業代上乗せするよ」
骨を埋めると決めた会社だ。評価されて嬉しくない訳がなかった。
「任せて下さい!」
二週間ほど過ぎて、帰宅後に呼び出された。
なるほど、こういう形でやるなら気付かない訳だ。
出社した僕は、事務所に入る。出勤していたのは、作業着姿の社長ともう1人の先輩社員だけだった。
「――いらしたよ」
僅かに開けてあった門を通り、暗い色のワゴン車が一台、敷地に入って来た。
運転していた男は、社長にきっちりと一礼する。顔に傷があり、眉毛が途切れていた。
ワゴン車には、2メートルはないぐらいの長さのナイロンの袋に何かが入っていた。
僕と先輩2人で持ち上げる。
ずしりと重く、柔らかい。
先輩は大柄で力もあるので、運ぶのにそれほど手間はなかった。
僕は先輩と一緒にそれを薄暗い処理場の粉砕器に通し、カケラを焼却処分した。
その後、2月に1回か2回ぐらい夜勤はあった。
4年ほどしたある日。
夜勤に来ているのは社長だけだった。
先輩が遅いのは珍しいな、と思いつつ着替えていると。
「遅くなりました!」
3年ほど前に入社した後輩が、姿を現した。
立場がいつの間にか先輩になっていたのか。
すぐ例のお客さんがやって来た。
消したままの車内灯でよく見えないが、今日もナイロンの袋が積まれている。
テコでも欲しくなりそうな大きさだが、ここは先輩として頑張らなければ。
語り手の行く末…
お疲れ様です。