吸う音

つまり、カバンには何も入ってなく空っぽで
ノートには何も書かれておらず
スマホには何のデータもなかった

俺は新人が何度もそのカバンでここにやってきて、研修中はそのノートを開いていて
休憩中にはそのスマホをいじっているのを何度も見ているのだが、すべてフリだったようだ

うすら寒い話だった

だが、それ以上に怖かったのは、その犬の死体の状態だった

これは警官が話しているのをたまたま聞いたのだが、犬の死体はまるで雑巾を絞るかのように、ねじれた状態だったというのだ

犬の死体は排水溝に吸い込まれたかのように細く伸びていて、とんでもない力でないとこうはならないという話だった

俺はあの音を思い出した

ズリュウリュウリュリュウウウウ！！！

何かが吸い込まれていく音
あの音は夢ではなかったのか

その事件から何年か経ったが、新人の行方はわからずじまいだ

奴は何者なのか
何故、犬の死体を職場に捨てたのか
あの音は現実の音だったのか

何もわからない

俺はそれからすぐにその仕事をやめて、違う場所で警備の仕事をしている

あれ以来、俺は耳栓をして寝るようになった

またあの音を聞くことになったら、俺は発狂してしまうだろうからな

ズリュウリュウリュリュウウウウ！！！