霊感が強い友人
投稿者:件の首 (54)
私はとある田舎の村の出身で、分校には小中合わせて20人ほどの生徒しかいなかった。
一番よく遊んだのは唯一の同級生であるA子だった。
彼女は考えるより動くタイプの明るい行動派だったが、いつの頃からか霊が見えると言い始めた。
「この村って1000年以上も前からあるんだから、人ぐらいどこかしら死んでない?」
「普通は1、2年で消えるんだよ。恨みや無念が強いと100年ぐらい残る場合もあるけど」
その後、私たちは高校に上がり、大学受験を迎えた。
東京にある大学を志望した私たちは、同じホテルに泊まる事にした。その方が安心、という親の勧めもあった。
初めての飛行機にドキドキしつつ、羽田空港が近付いてきた。
着陸態勢に入り、地上のものがくっきり見え始めた時。
いきなりA子が声にならない悲鳴を上げて安全ベルトを外し、機内後部に向けて駈けだした。
キャビンアテンダントが取り押さえても、A子は悲鳴を上げ続け、失禁さえしていた。
救急搬送された後も彼女の狂乱状態は続き、受験も何もなく自宅へと帰された。
あまりの事に私も動揺を抑える事が出来ず、結局入試は惨憺たる有様だった。
心配半分、受験失敗の絶望感半分で帰って来た私を、A子は村のバス停で出迎えた。
彼女はもうすっかり落ち着いていた。
「一体何があったの?」
つい、責める口調になっていた。
「……怨霊が」
「またそんな話?」
「1体や2体じゃないんだよ。百、千、いやもっとそれ以上の怨霊が渦巻いて層を作ってたんだよ」
言葉にしただけでA子は、カタカタと震えていた。
「東京って一体何があったの!? 絶対あそこ、おかしいよ!」
彼女にはどうも本当に霊が見えているらしい。
それから、その事がなくても彼女は、多分合格しなかっただろう。
……その知識で、何で日本史ある大学受けたのさ。
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