危険なリサイクルショップ
投稿者:ねこじろう (147)
俺は不審に思いながらもエンジンをかけると、ゆっくり車を動かし始めた。
入学したての頃の松山は明るくて人当たりの良い奴だった。
その頃までは俺も結構仲良くしていて、他の奴と連れだってたまに遊びにいったりもしていた。
だが初めての夏休み中に何気に立ち寄ったパチンコで大勝ちしたのをきっかけにどんどんはまりだしたようで、休み明けにはホールに入り浸るようになっていたようだ。仕送りやバイトの金では足らなくなって、やがて俺や他の奴らに金を無心しだし、挙げ句の果てはサラ金にまで手をだすようになってしまったみたいだ。
二回生にあがる頃には、キャンパスでその姿を見かけることは殆どなくなっていた。
聞くところによると、友人やサラ金会社からの支払い催促攻勢によりとうとう精神に異常をきだしてしまい、普段は殆どアパートの部屋に閉じ籠るようになってしまっているという。
それから長い夏休みが明け、10月の中期テストも終わり、学内も落ち着きを取り戻しだした11月のある日。
午前中の講義が終わり教室を出ようとしていると、背後から声がする。
「おい、中西!」
振り向くと、入学時からの友人の浜中が立っている。
少しいいか?と言われたので、キャンパスにあるベンチに2人並んで腰掛け話しだした。
前を通りすぎる学生たちのファッションは、すっかり冬のコーデだ。
おもむろに浜中が切り出す。
「お前、ここ最近、松山見掛けたことあるか?」
「いや、ないな。お前は?」
俺は例のリサイクルショップの件は触れなかった。
彼は「俺もない」と一言呟きしばらく俯いていたが、再び続けた。
「実はな俺、あいつと同じアパートに住んでいるんだけど、この間1階の集合ポストのところであいつのポストを見たら、郵便物が溢れかえっていたんだ。その時たまたま来てたオーナーのおっさんが言うには、あいつ家賃を数ヶ月滞納しているらしくて、それで何度となく呼び鈴を押したりドアを叩いたりしているのだけど、一向に出てこないらしい」
「そもそも、あいつアパートにいるのか?」
俺が尋ねると、浜中は深刻な顔をしながら続けた。
「そうなんだ、それでオーナーのおっさん、アパート防犯カメラの映像記録を遡って、あいつのアパート退出の記録を調べたらしいんだ。そしたらなんと8月半ばの夜に部屋に戻って、9月1日に一度だけ出掛けて戻ってからは一歩も外に出てないということが分かったらしい」
確かリサイクルショップで松山を見たのは8月の初め。
それから10日ほどして帰ってから9月1日に一回しか外に出ていないというのか?
今日はもう11月の7日だというのに、、、
「それでな、いい加減オーナーも心配になったようで、とうとう明後日の日曜に合鍵を使って中に入るらしい。
それで友人の俺も一緒に立ち会って欲しいと言われたんだ。もし良かったら、お前も一緒に来ないか?」
そう言って恐る恐る俺の顔を覗く浜中の目を見て、俺はコクりと頷いた。
そして日曜日の午後3時。
俺、浜中、アパートオーナーのおっさん3人は、4階建てアパートの入口前で落ち合った。
オーナーを先頭にエレベーターホールまで歩くと、3人はそのままエレベーターに乗り込む。
3階で降り、ぞろぞろ廊下を歩き進んでいると、突然先頭のオーナーが305号室の前で立ち止まった。
俺と浜中も止まる。
どうやら、この部屋のようだ。
文章がとても上手なので、怖さの伝わり方が凄かった
怖い……
Kというリサイクルショップの名前が知りたい…