さまよう祖母の霊

私が高校生の時、父方の祖母が亡くなりました。最後は認知症で、病院にお見舞いに行っても、「あなたはお琴の先生の○○ね？」なんて、私が孫であることもわからなくなっていました。

お葬式も済み、祖母が亡くなって数ヶ月が経ちました。
ある日、母が「夢におばあちゃんが出て来たわ」と言いました。母の夢に出てきた祖母は、病院で着ていた浴衣姿で我が家へ帰ってきたそうです。母は慌てて庭を隔てた祖母の家に行き、着物を出して着せたそうです。

それから数日経った頃。
その頃姉と私は同じ部屋でベッドを並べて寝ていました。ある夜中、隣で寝ている姉がギョッとする叫び声を上げたので、私は飛び起きました。
姉は、「おばあちゃんが私の腕を掴んで、ここが、ここが痛い！」と半泣きです。
聞けば、夢の中で自宅の門を入って祖母の家の前を通ったところ、急に祖母の家の玄関が開き、祖母が姉の腕を掴んだそうです。

姉は、祖母が唯一可愛がった孫でした。
真夜中の暗い部屋の中で、私は空をにらみながら思わず「おばあちゃんダメだよ、連れてっちゃ！」と叫んでいました。

これらの話を聞いた父は、それから1週間か10日間、家族で揃って仏壇にお経を上げるようにしました。それで、祖母が誰かの夢に出てくるようなことはなくなりました。

その後、結構我儘だった祖母の話を友達に話したりすると、私の夢の中に祖母が現れました。それも、井戸の中から出てきて、私を恨めしそうな目で見るのです。夜中に飛び起き、ゾっとしました。

更に祖母の33年忌辺りの年。
私の夢に、祖母の家から出てきた祖母は、見たことのない花柄のワンピースを着て微笑んでいました。
さまよっていた祖母は、33年かかって成仏したのでしょうか。
それとも、まだ・・・。