海からの死者
投稿者:おつまみ (20)
これは娘が小学生の頃の話です。
海に行きたいという娘を連れて、友人と三人で海に行きました。
友人は波打ち際で寝てるからというので、私は娘を連れて海へと入りました。
最初は娘が浮き輪を使い、私がビーチボールを抱きかかえ、お互いに浮かんで遊んでいたのですが、途中から浮き輪は嫌だと言い出し、私が浮き輪で娘がビーチボールを抱いていました。
お互いにぷかぷかと笑いながら浮かんでいたのですが、いつの間にか沖の方まで流され、これはまずいと思った私は岸に戻ることを娘に言いました。
娘は「うん」とは言うものの、一向に動こうとはしません。
「どうしたの?」と声をかけても返事がなく、そのうち意識が遠のいているような気がしました。
「しっかりして!」と声をかけ、娘の体を支えるように腕を伸ばします。
ところが、娘の方は全てを放棄しているように、全く体に力を入れません。
さらには、ビーチボールを手放そうとしている状態。
これはヤバイ!
そう思った私は、とにかく浮き輪のヘリに娘の腕を絡ませ、ビーチボールを抱きかかえるように言いました。
必死に岸へと泳ぎ、何とか足の着くところまで来たのですが、やっぱり娘はぼんやりしています。
さらには、手から離れたビーチボールをふらふらしながら追いかけようとするので、「そんなのはいらないから!岸に上がるよ!」と引っ張るようにパラソルの場所まで連れて行きました。
後日、どうしてそのような状態になったのか娘に聞いてみると、海の底から手が伸びてきて、自分の足を引っ張っていたと言います。
それも、1本や2本の手ではなく、無数に伸びている手です。
さらには「もういいよ、頑張ったじゃない。これで終わりにしようね」という女性の声。
娘は「お母さんの声だ・・・お母さんがそういうなら、もういいよね」と意識を手放そうとしたそうです。
そこに私が「しっかりして!」と怒鳴ったもので、ハッと我に返り「お母さんが死のうなんて言わない。あれはお母さんじゃない!」と思ったそうです。
すると頭の中に、低い男性の声で「ちっ、もう少しだったのに」と聞こえたというのです。
ビーチボールを追いかけていた時も、「こっちだよ、こっち。おいで」と誰かに呼ばれているような気がして、ふらふらの状態でありながら、ボールを追いかけたと言います。
子供の頃に、母親から「海は死者がいるから、お盆に行くもんじゃないよ」と言われていたのを思い出しました。
そんなのは単なる言い伝えで、クラゲがでて危ないから、その時期は行くなというだけのことだろうと思っていましたが、本当に死者がいて足を引っ張るのか・・・。
と思わずぞっとする体験をしました。
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